ああ寒い。
マフラーはぐるぐると首に巻き付いて、熱を逃すまいと締め付けている。空は、雪でも降るんじゃないかってくらいどんよりと重たい色をしていた。
「……」
「……」
わたしと風介は互いに寒さをこらえるように無言のまま歩く。しかしまあ、風介はどちらかと言えば寡黙な方だから、寒かろうが暑かろうがこのスタイルは変わらないのだろうけど。
「……さむい」
「……うん」
ふと風介は立ち止まる、何事かとわたしも一緒にその場に立った。むーっとした仏頂面が心なしかいつもより優しい。
「………」
「……風介?」
覗き込んだやたしを一瞥すると、風介は学ランのポケットに突っ込んでいた左手をおもむろに取り出して鞄をつかんでいたわたしの右手を掴む。
「………」
「……つめたい」
「……風介も、」
ふん、と鼻を鳴らすように小さく笑って風介はそのまま絡めた2つの手をポケットに戻した。
「……あったかい」
「…ん」
ちょっとだけ照れたように目を泳がせる風介が何か可愛くて、繋いだ手をギュッと握った。
ぬくもり / 20090207