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クリームついてる、そんな心地よい低音の台詞の直後に頬に暖かい指先が触れた。そのままクリームを自分の口に持って行って丁寧に舐めとるマークに、私が触れられた頬を赤らめたのは言うまでもない。趣味のお菓子作りを別に手伝う様子もなくただただ傍観しているだけのマークに非難の目を向けると、柔らかい笑顔で返された。頬杖をつきながらこちらを見るこの男はいったいどこまでわかっているのやら。

「季結は本当に可愛いな」

唐突に笑顔でこんなことを言ってくるからたまったものではない。一気に熱が灯る頬を隠そうと目を背けようとすると、いつの間にか目の前に来ていたマークの手に阻まれる。言葉を発する前に唇を塞がれた。悪戯っ子のように無邪気に笑うマークに開いた口か塞がらない、というか、言葉を発そうにも言いたいことか上手くまとまらなくて口だけがパクパクと動いた。おでこに優しく触れるだけのキスを落としたマークは、徐に私が泡立てていたクリームを混ぜ始めた。

「ねえマーク、」
「ん?」
「どうして、その…急にキスしたりするの?」

さっきまで見ているだけで手伝おうとしなかったマークに作業を手伝ってもらいながら、顔は上げずにそう尋ねてみる。横に立っているマークがこちらを見る気配がする。きっときょとんと不意をつかれたような顔をしているのだろう、少し考えた後マークは恥ずかしがる様子もなくこんなことを言った。

「キスしたいと思ったから」

季結は人前でキスをするのを嫌うだろう?だから、2人きりのときは遠慮しないようにしようと思って。

やんわりと指に絡めた髪に口づけながら笑うこの男は、悪気はないのだろうけれど私の心臓を壊そうとしている。好きだとか、愛してるとか、他の男が彼の言うような台詞を口にしたら、きっと鳥肌ものだろう。そんな台詞を飄々と言ってのけるマークに、恥ずかしいと思う反面、喜んでいる自分がいる。ただ、口内に広がる味がクリームのように甘いのは、私が彼におぼれている証拠であるのは間違いない。

sweet sweet / 20100714

マークは天然プレイボーイだと信じて疑わない。お姫様みたいだな、とか本気で言いやがると思う。


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