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「飛鳥!一哉!」

懐かしい、声がした。久しぶりに一之瀬と戻ってきたアメリカの空港ではユニコーンのメンバーが勢揃いしていて、変わってねえなあって、ちょっと笑えた。その中心にいる季結も前に比べると髪も伸びて可愛くなったように感じるけど、やっぱりあまり変わっていないような気もする。それはガキの時から変わらない無邪気な笑顔のせいなんだろうけど、こんなことを帰ってきて早々考え込んでいる俺もたぶん、昔とそんなに変わってねえんじゃないかって。

「おかえりなさい!」
「ああ、ただいま」

抱きついてきた季結を受け止めて、ふと隣を見る。おかえり、という言葉をかけてもらっていた一之瀬がちょっと微妙な顔をしていた。一之瀬は日本で久しぶりに木野と再会したとき、確かにただいまと言った。そして今、アメリカでもただいまを言う。俺もよくあることだけど、こうして日本とアメリカを行き来してると俺はいったいどこの国の人間なんだと思ってしまう。生まれは日本、だけど、大事な思い出の多いアメリカ、どっちも故郷だと言えてしまえばそれで解決するけど、どっちだと迫られると、俺たちにとっちゃこれ以上に究極の選択はない。

「飛鳥、聞いてるの」
「ん、ああ」
「うそね、何か考え事してたでしょう?」
「はは、悪い悪い」

小さく頬を膨らませる季結は俺の幼なじみのひとりで、ユニコーンのマネージャーで、実は、前からちょっと好きだったりする女。FFIの世界大会が迫る今、当然のごとく俺と一之瀬はアメリカか日本のどちらかを選ばなければならなくなるわけだが、どうしようか2人で悩んでいたとき、やっぱり俺は、アメリカだなって。季結のことだと察した一之瀬は仕方ないなあと苦笑した。

「秋や守は元気だった?」
「ああ、元気すぎて西垣なんか俺たちに喧嘩売ってきたんだぜ」
「また変な言い方するなよ土門。季結が誤解しちゃうだろ」

こうやってアメリカの奴らと笑いあうのも、雷門のメンバーとサッカーするのも、俺にとっては同じくらい大切だし、同じくらい楽しいけど、やっぱ勝負事となると話は別だ。好きな相手と同じチームで、応援してもらえるのは男としてこれ以上の至福もないだろう。それに、雷門の連中と俺たちユニコーン、どっちが強いのか、確かめてみたいって言うのもある。アメリカの俺たちが世界でどこまで行けるか、日本の円堂たちが世界にどれくらい通用するのか。しかと見届けてみようじゃないの。これからのことを考えると楽しくて仕方がない、隣の季結の頭をくしゃくしゃと撫でて、きょとんと首を傾げた姿に笑顔を向けた。

翼は揃った / 20100625


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