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「…夢野、どうした?」
「え?」
「ぼーっとしてたぞ」

ちょっとだけ癖のある茶色が風に揺れる、高めのテナーボイス、屈託のない笑顔。私はずっとずっと、あの人に恋してる。先輩を見てました、なんて口が裂けても言えない。休憩中の一時は半田先輩とお話出来るチャンスだ、私は声が上ずるのを抑えて笑顔を向けた。ちゃんと笑えてるかしら、この笑顔に乗せて私の気持ちも伝えられたらいいのに何て、そう思ってしまうのは変なことじゃないよね。マネージャーとして入部して、先輩と出会って、恋をした。在り来たりなようだけどそんな日常が私にはとってはとっても甘くてワクワクするの。いつかあの人の隣に立てたら、そう願うのは贅沢でしょうか。

「あ、えっと…いい天気だなあって思って」
「ん…あー、確かに!」
「サッカー日和ですね」

幸せってきっと、こういうこと。欲を言えばまだまだ足りないくらい先輩が大好きで、もっと近づきたい、触れてほしいと願う自分がいるけれど。でも、今はまだ、こうやって傍で見ていられるだけで十分な気がした。そんなことを頭の中で考えていると、先輩と目があった。どきん、私の心臓が走り出す。先輩はこっちへに近づいてきたかと思うと、急に私の髪を触った。あまりにも突然すぎて無意識に体がびくついた、先輩の手が、指が私の髪を梳いている。顔が熱い、頭も熱い。ドキドキが伝わってしまうんじゃないかというくらい体中の血液が踊り出す。

「ねぐせっ」
「っえ?」
「髪の毛、跳ねてるから直してるだけだって!何もしねーから、そんなにビクつくなよなー」
「あ、え!」

わたわたと言葉を探しあぐねている私、面白そうに笑った先輩はよしっと一声言った後で私の頭を優しく小突いた。女の子なんだから、身だしなみはしっかりしないとなー、なんて悪戯っ子みたいに笑う先輩。私の熱は最高潮だ、ドキドキが止まらないってこんな感じなんだ、止まるどころかどんどん早鐘を打つ心音にリンクして私の恋心も加速してゆく。先輩、半田せんぱい!大好きです!いつか、きっと貴方に伝えられますように。

どきどき乙女心 / 20100420

半田は年上にモテそうだけどあえて後輩にしてみた。


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テーマ「人外ファンタジー」
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