徒花 | ナノ





時は明治、人々は新たな異国の文化を戸惑いながらも受け入れ、鎖国を続けていた日本はだんだんと外の世界へと目を向け始めていた。そんな中で生まれた4つの大家、雷門・鬼道・財前そして吉良。彼らはそれぞれ頭首を中心に勢力を拡大、いくつもの小さな家や一族を巻き込んで成長していったのだった。

人の縁とは実に摩訶不思議なもので、思わぬところで繋がっているものである。同時に人の心というのもまた然り、双方共に不思議で理解し得るものではない。特に愛というのはとりわけ理解できないものだ。例えば、誰かを好きになったとしてその気持ちを伝えたいと思うのも、そっと自分の胸にしまっておこうと思うのも、人それぞれ違う。思いの伝え方やその気持ちの発生する理由まで様々で、他人のことは自分にはわからずまた自分のことも他人にはわかってもらえない。それはひどく不安定で、誰かと関わる度に自分の中の何かが歪んでしまいそうほどに面白くないことではあったが、それでも世界だけは正常に回るのだった。

人間は笑う生物である、とはよく言ったものだが悩み苦しむのもまた人間の性である。人間は悩み苦しむことで生きる内に幾千もの選択を迫られる。正しく進めば何かが変わるかもしれない、道を違えれば何かを失うことになる。しかしどれが正しいのか、どれが間違いなのか、それを知る術さえも人間は持ち得ない。自らの歪みにさえも気づかずに、ただ失ったものを求め続ける姿はひどく滑稽だ。しかし、もしかしたらそれこそが人間の姿なのかもしれない。泥にまみれても尚、美しく咲くことができたなら、そう願うのも仕方のないことなのだろうか。薄汚れたこの時代に生きる人間たちは、なにを選び、あるいは、なにを失うのか。そしてまた1人、選択を迫られた少年がいた。否、選択せざるを得ない運命にあった、哀れな少年がいた。
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