明日の奥村先生の授業の予習をばっちりしていく予定だったのに、いきなり寮の窓に現れたアマイモンさんが出掛けますよ。なんて有無を言わさず私のことを抱き抱えて夜の空を飛ぶように走り始めたから、私の予定は大幅に変わってしまった。
「アマイモンさん…今ルームメートがいなかったからよかったですけど…バレちゃったらどうしてたんですか!」
「そのるーむめーとを殺せばいいです。」
「ころせばって…そういう風に簡単に殺すなんて言わないって私と約束したじゃないですか!」
「はい。すみません。」
素直にあやまるものだから、私もそれ以上何も言えなくなってしまった。私にも予定があったはずなのに、アマイモンさんが現れて、そして私を抱き上げてくれて、こうして夜の町を一緒に見下ろすことが、嫌じゃない。……むしろ嬉しい。なんて、考えている私もいる。今夜もいつもと同じで町で一番高い塔に行くんだろう。景色を見るふりをして近くにあるアマイモンさんの顔を盗み見てみる。いつもとまったく変わらない表情に小さく笑いが漏れた。
「アマイモンさんが抱き上げてくれてると、なんだか私、ダイエットって言葉を忘れそうです。」
「だいえっと…?」
「ダイエットっていうのはですね…簡単に言うと体重を減らすこととか、もっと体を細くするとかそんなことです。」
「そうなんですか。」
「そうなんです。」
他愛のない会話を終え、私はアマイモンさんの首に腕を回し直す。ふわりといつもの匂いがした。安心する、そんな風に思うのは悪魔を祓う力を塾で学んでいる私が持ってはいけない感情だというのはわかっている。そう思うとすごく切なくなって、胸が締め付けられた。
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アマイモンに連れ去られたい