アイラブスタンド! | ナノ

 ハイエロファントグリーンは、いつも花京院の隣にいる。花京院は、『僕はゲームが好きで、ほとんど家からでなかったから、友達なんてほとんど出来なかったんだよ。』なんて自嘲気味に笑った時、こんなにも素敵な友達が隣にいつもいたじゃないか、とわたしは憤慨した。

 今、綺麗な瞳に心配そうな色を浮かべて花京院を見つめているのは、他でもない、彼のスタンドのハイエロファントグリーンだ。優しい花京院が可愛い女の子から受けた告白を心を痛めながら断ったことが、そんなに心配なんだろうか。

 わたしは、花京院が羨ましくて仕方がない。ハイエロファントグリーンが、花京院じゃなくて、わたしの側にいつも居てくれるなら、どんなに幸せだろうか。そんなことを、今もなお、自分に勇気を振り絞って想いを伝えてくれた女の子のことを考えて心を痛めている花京院の隣で思っているわたしは、どれだけ酷い奴なんだ。


「かきょーいんってば、まだイジイジ考えてんの?」

「いや、だって……あの子も一生懸命、考えて僕に伝えてくれたんだろうし
…」

「でも、顔も名前も知らない子なんでしょ、なら、断って当たり前。そんなに悩んでるなら、これから仲良くしてみれば?」

「………いや、それは……」


 言い淀む花京院を横目に見ながら、わたしは飲みかけの紙パックに入っている珈琲牛乳をお下品な音と共に飲み干した。

 わたしは知っている。花京院がモテるのも、花京院が受ける数々の告白を断るのも、そのたびに相談してきてわたしの反応を窺うことも、花京院が、こんなわたしのことを好いてくれていることも。

 申し訳ないけれど、わたしの目には花京院が映ることはないだろう。ぐしゃりと潰した紙パックに刺さったままのストローから、茶色の液体が流れ落ちた。わたしが今から行おうとしている行為は、あまりにも汚い、今までのわたしからしたら、信じられない行為だ。…それはハイエロファントグリーンに出会うまでのわたし、という意味だけれど。


「じゃあ、わたしと付き合う?」


 それなら他の子の告白に心を痛めることもないよ。わたしの提案に、花京院は顔を上げた。何か言われる前にわたしから口を開く。


「好きなの、大好きなの。」


 一緒に、いたいよ。わたしがそう伝えると、花京院が心底嬉しそうな表情を浮かべて、わたしの背中に腕を回した。

 嘘は言ってないよ。わたしは、貴方が大好きだから。

 花京院の肩越しに見えたハイエロファントグリーンが、ゆらゆらと揺れている。





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