短いおはなし 2014 | ナノ


 私より大きくてたくましい体のリゾットが余裕で横になることができるベッドも、私が追加で入り込んでしまえば、少し狭くなってしまう。私もリゾットも暗殺稼業を営んでいるから、この家に帰るのは夜遅かったり、既に日が昇っていたり、さまざまだ。だけど、チームで担う立場上、リゾットは私より睡眠時間が短いことが多くて、私が先にベッドに入って寝ている時に、後から来たリゾットはちゃんと寝れているのかどうか結構心配だったりする。

 しかも、この小さな家はリゾットのもので、私がここに転がり込んだ形での同居なのだ。このベッドの持ち主が疲れた体で帰って来て、寝るベッドが狭いんじゃあ、申し訳なくて、私がある時、貯めたお金でもう少し大きなベッドを買おうと提案したことがある。そのときのリゾットの台詞は今思い出しても、にやけてしまう。


『狭いベッドにお前と一緒に寝ているのはオレにとっては幸せなんだが』


 そう言ったリゾットが少し困ったような顔をして、だがお前が欲しいなら購入してもいい。と言ったのは本当によく覚えている。あのときは嬉しすぎて、普段は自分からはあまりしないキスを何度もしてしまったことは鮮明に思い出すことができる。

 そういえば、と私はそのついでにさらに同居に至った経緯に思いを馳せる。何度かお酒を酌み交わしたり、仕事のない日に2人で出掛けたり、今思えばいわゆるデートというやつを重ねていくうちにリゾットから、『一緒に住まないか』と簡潔に言われたんだっけ。住む前は一夜を共にしたあと、帰らなきゃ、と服を着始める私を引き止めるため、リゾットがその腕から解放してくれないこともあった。


「ま、こうして一緒の家に住むようになっても離してくれないんだけどね」


 私のつぶやきが聞こえないほど熟睡しているのか、私を抱き枕のように扱うリゾットはまだ夢の中だ。でも、そろそろ起きて何かお腹に入れないと、仕事に影響するかもしれない。


「リゾット〜?まだ起きないの?」

「ん……」


 私の呼びかけに対して、返事を返さずに、私の背中に回す腕の力を強めたリゾットに、思わず笑みがこぼれた。

 リゾットは意外と甘えんぼさんだ。いつもチームのみんなを引っ張っている威厳のある姿とはまた違ったリゾットもとっても魅力的だと思う。

 ベッドの中で私を抱きしめたまま離そうとしないリゾットに母性本能的ななにかがくすぐられる感覚がする。これを本気で怒ったりなんかできるわけない。


「ねえ、リゾット。私もこの狭いベッドに2人でくっついている時間が本当に幸せよ」


 聞こえるかどうか分からないけど、そう言ってみたら、リゾットの小さく吐いた息をつむじあたりが感じた。



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タイトル バイ 無垢


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