2013バレンタイン | ナノ
火神くん喜んでくれるかな、甘いものは苦手じゃないとは言ってたけど、それでも火神くんの喜ぶ顔がみたいな…と考えながらチョコレートと小麦粉を混ぜる。火神くんのことを考えると、胸がきゅんきゅん締め付けられて苦しくなる。好きで好きでしかたないのに、火神くんと一緒にいると恥ずかしくてうまくしゃべれなくて、いつも家に帰ってきては後悔する毎日を繰り返している。だからこそ、今日は気持ちを形にして伝えたい。私は、火神くんのことが大好きだよってこと。

「あとは焼くだけ…っと」オーブンの扉を閉めて、 焼き時間を40分にセットする。早めに準備したから、火神くんが部活を終える頃には、あら熱は取れているはず。そのあと冷蔵庫で冷やせば、火神くんの自主練習が終わる頃にギリギリ間に合わせることができるだろう。

帰ってきたおねぇちゃんに味見をしてもらってお墨付きになったケーキを出来るだけ綺麗にラッピングする。火神くん気に入ってくれるかな、とか、ずっと同じことが頭をグルグル回って、家からどんな道順で、火神くんが練習している体育館までたどり着いたのか覚えていなかった。でも、体育館に着いて、火神くんが楽しそうにバスケをしているのを見てキュンとしたことだけははっきりと分かった。本当にさっきから馬鹿のひとつ覚えみたいで嫌になるけど、火神くんが好きでしかたなくって胸が苦しくなってしまうのだ。

「わり、待たせた」
「ううん…大丈夫だよ!むしろ、私も押し掛けてごめんね」
「いや…押し掛けてきたなんて思わねーし、むしろ俺も会えて嬉しい、し」

火神くんをそっと盗み見ると、真っ赤な顔をしていて、もともと顔が熱かった私もさらに熱を増した。渡すなら今だ…!と差し出した両手に火神くんは目を見開く。

「これ…?」
「あ、あのね!いつもありがとうって気持ちと、あの、えっと……火神くんのことが、だいすき、ですっ」

勇気を出して伝えた言葉と共に手からは重みが消え、そして私のからだがふわっと火神くんの体温に包まれた。「……サンキュな、」字面だけで言えばそっけないような台詞も、耳元で掠れた声で囁かれればそれだけでもう、私を幸せにしてしまうのだ。

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