2013バレンタイン | ナノ
いろいろと残念なことで有名な森山先輩に彼女が出来たという噂に、校内で衝撃が走った。嘘でしょ、なんで?とかいろんな意見が飛び交う中、私は、残念でもなんだかんだかっこいいから、そりゃ彼女くらい作ろうと思えばつくれるでしょうよ、とため息をついた。

私にも、森山先輩と張り合えるくらいの残念要素を持った彼氏がいるけど、パっと見はクール爽やかイケメンだから、多分学校で何人かの女の子からはチョコレートを渡されてるんだろう。そしてデレデレすることもなく、ごく普通の男子高校生のように喜んだあと、「ちょこっと洒落てるチョコをありがとう」とか真面目な顔で言っている姿が目に浮かんだ。自分の彼氏ながら残念すぎる……ついでに自分のダジャレのセンスにも絶望。

放課後、帰宅部の私は、残念彼氏の伊月に会うため、電車に揺られて、誠凛に向かった。リコと伊月と日向は同じ中学出身だから、体育館の中で練習を見学させてもらえたのだけど、久々に見たバスケをする伊月はすごくかっこよくて、正直見とれてしまっていた。帰り道は、途中で皆と別れて伊月と二人で並んで帰る。

「今年は何個もらえたの?」
「…?」
「バレンタインのチョコのこと」
「え?誰からももらってないよ?」
「えっな、なんで!?伊月はモテるってリコ言ってたよ?」

何故か慌てる私に伊月は吹き出したあと、何かを思案するようなポーズを数秒とる。

「あ、今年はみょうじから俺だけのためのチョコもらえるってみんなに自慢してたからかもしれない」
「はい?」
「だって、去年はリコとか日向とかにもあげてただろ」
「ま、まあ…あのときは伊月と付き合ってなかったし」

私たちが付き合い始めたのは、まだ高校一年生の3月だった。もちろん去年のバレンタインの頃も伊月のことは好きだったけど、告白出来てなかったのだ。だから、表面上は友達としての『義理チョコ』を配ったことを伊月は言っているんだろう。

「俺は、みょうじから俺だけのために用意してくれたチョコがすごく楽しみだったんだ」

ドストレートな表現でダジャレを言わなければただのイケメンである伊月にそんなことを言われてしまえば、私は白旗を振るしかなかったのだった。


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