2013バレンタイン | ナノ
教室に雑誌を持ってきた友達がいて、季節的に特集はバレンタインだったから、朝のホームルーム前にひとしきり盛り上がった。チョコの種類とか、ラッピングとか、シチュエーションとか。私の仲良くしている子達の中に、一人バレンタイン告白をすると決めた子がいて、なんだか私も自分のことのようにわくわくドキドキしている。彼女は、ずっと好きだった先輩に想いを伝えるらしい。いいなぁ青春っぽくて、と考えていると、隣の席の黒子くんが読んでいた本をぱたんと閉じた。先生が来たのかと思ってドアの方を見てみたけど、まだ来ていないようだった。

「みょうじさんは、誰かにあげるんですか?」
「え、あ、バレンタインのこと?」
「はい」
「友達と家族にはあげる予定だよ」
「そうですか」

それだけ聞くとまた黒子くんは本を開いて自分の世界に戻ってしまった。私はというと、途中で放り出されたような宙ぶらりんな状態で、なんとなく気持ちが悪かった。本当は真剣に本を読んでいる黒子くんの邪魔はしたくないんだけれど、こればっかりは彼に聞かなくては本意がわからない。私は意を決して、話しかけてみた。どうして黒子くんが私にそんな質問をしたのか、ただ純粋に知りたかったから。

「みょうじさんが、男性にチョコレートをあげる予定があったらどうしようって思っていたんです」

「でも、安心しました。僕にもまだチャンスがあるみたいなので」

窓から差し込む光に目を少し細めて笑う黒子くんが綺麗すぎて、私はことばを失う。そんな私を見て黒子くんは、可愛い人ですねと微笑んだ。


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