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夕食の買い忘れに気付いて近所のスーパーへ出かけた帰り道、飛影さんに会った。会ったというか、木の上に立っていた飛影さんを見つけた。…という表現の方が正しいけれど。


「あ、こんばんは!」
「…………。」


木の上に立っている飛影さんに手を降ると、私をじっと見たあと、ふいっと顔をそらしてしまった。飛影さんは無口でいつもこんな感じだからもう慣れたし、むしろ可愛いな、なんて思える余裕も出てきた。


「飛影さん、夜ごはんはもう済ませちゃいましたか?」
「………まだだ。」
「そうですか!よかった!よければウチでたべていきませんか?今日シチューなんです。」


そう言う私に飛影さんは変なものを見る目を向けてきた。シチュー嫌いですか?と聞くと、飛影さんは小さくため息をついて小さな声で本当に変わった奴だな…。と言った。そして木から飛び降りて私の隣に並んだ。おお、相変わらず身軽だ。


「行ってやってもいい。」
「ふふ、嬉しいです。」


そうして二人で家路につく。その間、私が飛影さんに質問をした。好きな食べ物、嫌いな食べ物、桑原さんと仲がよいこと、…あ、それは強く否定されたけれど。質問にめんどくさそうにしながらも一応答えてくれる飛影さんはやっぱり優しいと思う。



◆◇◆



「お口に合いましたか?」
「ふん……悪くはない。」
「よかった!あの、飛影さん?」


ためらいがちに名前を呼んでみると、飛影さんはいぶかしげにこちらを見た。飛影さんの鋭い瞳で凝視されてどぎまぎしてしまう。それでも勇気を振り絞って声に出してみる。


「……また、食べに来てくれませんか?ひとりだと寂しいし…その、飛影さんともっと一緒に………」


私の言葉の途中で、飛影さんはカーテンと窓をを開け放つ。開いた窓から入った風が、飛影さんの髪とマントをゆらした。夜空に飛影さんが溶け込んでしまうようで、そこには口に出せない人外の美しさがあった。


「人間がこの俺に命令か…」
「め、命令ってわけではないです…!」


私が慌てて首を横に降って否定すると飛影さんはふっ…と笑った。え?笑った!?飛影さんが笑った!?珍しいとかレアとかいう表現ではもったいないくらいの表情に私は思わず見とれてしまっていた。


「分かっている。」


そうして飛影さんは先ほどまでここにいたのが嘘のように私の前、私の部屋から消えていた。でも、私には聞こえた。飛影さんの楽しみにしている。という言葉が。次までにもっと料理の腕を上げようと思った。そしたら飛影さんがまた笑顔を見せてくれるかもしれない。


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蔵馬より飛影が好きなのです。でも妖狐を出されると悩む…(笑)飛影可愛いです。かっこいいです。

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