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「お誕生日おめでとうございます、坂田さん。」


ピンポーンという、最近は客が来なくて滅多に聞けない音が耳に入り、だるい体を引きずりながら、はいはーいと扉を開ける。すると、そこに立っていたのは、にっこりと微笑むなまえちゃんだった。


      ▽


「神楽ちゃんも新八くんも出掛けてるんですか…」
「あァ、悪いな。」


とりあえず中に入ってもらって二人で向き合う形で椅子に落ち着く。……いや実際落ち着いてないけどねコレ。なんでタイミング良く神楽の酢昆布が切れて、お通ちゃんのシングルがリリースされるんだよ。つーか、なまえちゃんもなんか視線泳がせちゃってあからさまに緊張してるし、言われてみればなまえちゃんと二人きりとか初めてだし、俺はなんか余裕ぶっこいてジャンプとか読んじゃってるしィィイイ!


「さっ坂田さん!」
「はっはい!」


改まって背筋を伸ばしたなまえちゃんにつられて俺も思わずジャンプを放り出しそれに続く。「今日1日、私を坂田さんのものにしてください!」……え?


「わ、私…坂田さんへの誕生日プレゼント…一生懸命考えたんですけど…どれもありきたりな気がして…だから、その、」


坂田さんの望むことを1日してあげようって思ったんです…。と真っ赤な顔になって説明するなまえちゃん。俺のものにしてくださいって台詞とか、こんな二人きりの状態で真っ赤な顔のなまえちゃんに、しかもそんな一生懸命な感じで見つめられながら言われたら銀さんのお願い、もとい欲望なんて大人な方向いっちゃうよ?アダルティー一直線だよ?若い男女が一つの部屋にいるってやっぱそういうことだよ…な?

黙ってなまえちゃんを見つめ返すと、なまえちゃんはそっと俺の隣に移動してきて、目を伏せた。………ってオイィィィイイ!!なんだこの子!どこでこんないじらしくて、男心を鷲掴みにする仕草学んできたのォォオオ!?俺は思わず、なまえちゃんの肩を掴む。


「…って…お前…」
「さかた、さん…」
「……そうだな、なまえちゃんが銀サンのものになったってことで、ひとつ目のお願い。」


馬鹿だな、こんなことで変に頑張らなくていいのに。そう思って思わず口元がゆるむ。掴んだ肩は僅かだが震え、うつむいているから見えにくいが表情は固い。こんななまえちゃんを食べて銀サンがお腹一杯になるとでも思ってるんだろうか。


「……俺のこと名前で呼べよ」
「え?」


ぱっと顔を上げたなまえちゃんの頭を撫でる。お願いはなんでも聞いてくれるはずだよなァ、と言えばこくんと頷いた。


「お願い二つ目、…銀サンのものでいるのを今日だけじゃなくて…なまえの一生、にすること。」
「えっ…そ、え!?な、な」
「悪いな、知らなかったか?俺、欲張りなんだわ。……なまえちゃんの一生の時間かけて先に進もうかと銀サン思うんだけど、どう?」


にいっと笑った俺の方を見ながら、なまえちゃんはきょとんとした顔でしばらく固まった。そして相変わらずの赤い顔で俺に抱きついてきた。


「その二つのお願い、了解しましたっ!…銀時さん…大好き!」



お願いした直後で言うのもなんだけど、もう我慢の限界越えたかもしれない。…まあでもなまえちゃんゾッコンな俺がこの笑顔を泣き顔に変えられる訳もなく…。俺はもう一度なまえちゃんの頭を撫でた。


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遅れすぎてごめんね銀ちゃん!おめでとう!

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テーマ「人外ファンタジー」
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