WJ+α | ナノ


あとをつけられていることには気づいていた。ルパンと組むようになってから早数年、馬鹿なことをしでかす度に名が売れるものだから、ルパンと離れている時でさえも常に誰かにつけられるようになっちまったのだ。まあ、そんな生活にも慣れた。慣れたからいい。…しかし、今回は少し訳が違う。


(なんだこのヘタクソさは…)


気配を隠そうという意志がないのかと思えるほどヘタクソな尾行にため息が出る。俺も舐められたもんだな、とつぶやきながら路地裏に入る。このお遊び尾行にもそろそろ面倒臭くなってきた。


「あっ!」
「俺になにか用で………も、」


路地裏に馬鹿素直に入って来るまでは、予想通りであった。予想と違ったのは、俺の目の前に現れたのが俺の胸ほどまでの身の丈の女だったことである。銃を突きつけられたまま女は目をくりくりさせてはにかむように微笑んだ。


「やっぱバレちゃったか。近くで見てもやっぱり男前ね。」
「あんた……何者だ。」


銃を突きつけているというのに動揺の『ど』の字も見せない女を睨み付けると、女は「私を次元の女にしてもらいたいの。」とあっけらかんと言ってのけた。それを聞いて俺は銃をしまう。こんな馬鹿馬鹿しいままごとに付き合ってられるか。そう思って背中を向けて歩き出せば、後ろで急に尋常じゃないほど激しく咳き込む音が耳に入る。振り返ると膝から崩れ落ちる女の姿があった。


「おいっ!大丈夫か!?」
「げほっ………なーんてね!つっかまえた!」
「っ……この野郎…」


抱き上げてみれば、素早く首に手を回されてホールドされた。目の前には、してやったり顔で微笑む女の顔。


「やっぱりイイ男ね。次元の女にしてもらうまでぜぇぇ〜ったい離さないんだから!」


そう言って抱きついてきた女からふわりと俺の鼻孔をくすぐる匂いがして、俺はこんな姿をルパンの奴に見られたら…と考えて頭が痛くなった。



title僕の精




×
「#オリジナル」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -