風影さまとしてお仕事中の我愛羅もかっこよくて好きだけど、こう毎日毎日、我愛羅が書類ばかり見ているんじゃあ、私がつまらない。
「我愛羅ぁ〜」
「なんだ?」
でも、我愛羅は優しすぎるくらい優しいから、私が名前を呼ぶと、こうして書類の上を走らせていたペンを持つ手を止めて、私の方を見てくれる。ずっと頑張ってるのは我愛羅で、体力的にも限界を越えてもおかしくないはずなのに。そんな頑張りやさんな我愛羅に「構ってもらえなくて寂しい」なんてワガママ、言えるわけない。
「…ちょっと根詰めすぎじゃない?お茶、淹れてくるね。」
そう告げて、私が立ち上がると我愛羅はうすく笑って、「頼む。」と言った。そんな姿も様になるなんて、我愛羅は本当にかっこいい。
◇◆
多分どこの誰が淹れたって変わらない味がするはずのインスタントのお茶だけど、我愛羅がおいしいって思ってくれますようにってお願いしながらお茶を淹れた。
「我愛羅、はい。」
「すまない。」
こら、こういうときは『ありがとう』でしょ?とたしなめると、我愛羅は「ありがとう。」と言い直した。私が満足して微笑むと手招きされた。それに素直に従って机を越えて我愛羅の横に並ぶと、我愛羅はすっと立ち上がる。いつの間にこんな身長差ができたんだろうなんて平和なことを考えていた私に起こったのは優しい抱擁だった。
「が……あら?」
「……たまには良いだろう?」
俺もお前が足りない、とささやかれて、少し私の体に回る腕の力が強くなる。寂しかったこととか、強がって頑張ってたことは我愛羅にはバレバレなんだろうなと思いながら私も抱きしめ返した。我愛羅も寂しがってくれてたんだ、と思うとその力は自然と強くなった。