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大きな窓に大きな雨粒が叩きつけられて、それはもうすごい音をたてている。時計の二つの針がてっぺんに近づくにつれてその音は強くなってきているようでもあった。私は一度窓に近寄り外の様子をうかがってみる。窓についた雨粒が途切れることなくつたい落ち、外の様子はほとんど掴めなかった。


「ザンザスさん...」


ため息にも近い音で私の口からもれた名前は私が今会いたくて仕方ない方のもの。彼は組織の一番上に存在しているだけあって、屋敷から出て任務に行くということはほとんどない。けれどそれは裏を返せば、彼がここを出ていくときはよっぽど重要なことだということでもある。スクアーロさんが言うには、私が来る前には半年くらいここに戻らなかったこともあるそうだ。


「まだ、一週間なのに...」


そう、まだザンザスさんが出て行ってから一週間しか経っていないのである。それでも私の心は寂しさでいっぱいだった。ザンザスさんは暗殺部隊の仕事の内容は私に話さない。危険なの?どれぐらいかかるの?そのような主旨の質問を投げかけても、「片付けば戻ってくる。」の一点張り。片付けられなかったときは?とは一度も聞けなかった。答えが怖かったから。

考えてもしかたない、雨のせいで部屋の温度もだいぶ下がっているしベットに入ってしまおうと私は決めて、ザンザスさんの無事を祈るため私は床に跪く。(ザンザスさん...どうか、どうか御無事で...)


「祈りは終わったか。」
「っ!?」


聞こえるはずのない声に振り向けば、そこにはコートを羽織ったままびしょ濡れで立つザンザスさんの姿があった。考えるよりも早く体が動くとはこういうことだったのか、と後から納得してしまうほど素早く私はザンザスさんの胸に飛び込んでいた。


「...濡れるだろうが」


私を受け止めてはくれたザンザスさんは、舌打ちをしたあと私を濡れた体から引き離そうとする。私はそれを拒むように抱きつく腕の力を強めた。ザンザスさんもそんな私の行動を見てあきらめたのだろうか、やっとその大きな体で包み込むようにして抱きしめてくれた。


「風邪ひいてもしらねぇからな」
「風邪なんかひいてもかまいませんっ...ザンザスさん無事でよかったっ...!帰ってきてくれてよかった...」
「...片付いたら帰ってくるって言っただろ...。」


呆れたようなザンザスさんの声音が耳元で響いて、私は思わず唇を尖らせる。待ってるのってとっても寂しいんですよ、それにとっても心配だし...と告げると、ザンザスさんは一度私から体を離して予告もなく深いキスをした。久しぶりのキスに体の奥がじん、と熱くなる。キスが終わって私を見つめたままザンザスさんは言った。


「待たせてるほうも辛いことを知ってるか、」


今日は寝かせるつもりも、待たせるつもりもねぇから、と挑発的な笑みを浮かべたザンザスさんの首に私は腕をそっと回した。時計の針はてっぺんを超えていた。



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title 僕の精

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