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すっっっごく嫌な音が私の頭の上で響いている。でも、身体全てが後ろからホールドされているせいで私は移動することが出来ない。口で言ったってこの男は聞く耳すらもたないだろう。それでもたまらなくなって私は身体を揺らした。


「もう〜っはなしてっ!」

「嫌です。」


しれっとした声で私の主張をはね除けたのは、地の王として知られるアマイモン。こんなすっとぼけたナメクジみたいな顔してるくせにこんな強いなんて…世の中どうかしてるよ!心の中でそんな訳のわからない暴言を吐きつつ、私はもう一度身体をよじる。頭を動かしたと同時に大量の菓子くずが落ちてきてぎょっとする。やっぱりあの嫌な音は私の頭の上でお菓子を食べる音だったか…。


「最悪……」

「なにがですか?」

「あんたが私の頭の上でお菓子なんかバリバリむしゃむしゃ食べるからでしょうが!」

「それは……災難でしたね。」

「えぇ、はい。そりゃあもう…ってアマイモンに言われたくない!」


っとにこの悪魔は掴み所がないと言うか…話が全部ずれていくと言うか…実際掴みたくも、話を成立させたくもないんだけど!むしろ関わりをきれいさっぱり消したいくらいなんだけど!私がそう考えていると不意に頭の上の音が消えた。


「アマイモン?食べおわ…」

「兄上が教えてくれたんです。」

「…?」

「愛する者と食を共にすることは、食べ物を一番美味しく変身させる魔法だそうです。」

「なっ…!?あ、あああ、愛する者…?」

「そして兄上が言った通り、いつもよりとても美味しく感じました。」


アマイモンがそう言い切ったとき私は、予想外の攻撃に力が入らなくなってしまっていた。あ、アマイモンの愛する者…って…え?頭の中が大洪水になって思考停止、身体活動停止している私に気付いたのか、アマイモンが椅子から立ち上がって、私をくるりと反転させて向き合う格好にさせた。


「どうしたんですか、名前。」


目の前で首を傾げるアマイモンが急に可愛く思えてくるから不思議。誰よこんな可愛い顔をナメクジみたいなんて言った奴は…。それでも急に素直になれない私は、食してたのはアマイモンだけで、私は何も食べてないもん。だから、本当に一番美味しかったなんて分からないじゃない、と悔し紛れに呟いてやった。


「なら、今からどこかに食べに行きましょう。」

「えっ…!」


私をふわりと抱き抱えたアマイモンは、豪快に窓を突き破り、外に飛び出した。その間、どんなデザイン!?と突っ込みたくなるあのぼろぼろマントで私を覆って守ってくれたアマイモン。外に飛び出した時に言われた「なまえに僕が最高の味を教えてあげます。」という台詞に私は恋に墜ちてしまったかもしれない。


(ってか高い!怖い!)
(なまえ…可愛いですね)
(う、うううるさい!)

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アマイモンが可愛すぎて生きるのが辛い



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