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※3Z山崎


「かわいいなあ、」


笑顔で友人たちと会話をしているなまえちゃんを見て、思わず口から出た本音。それを沖田さんに聞かれたのが俺の運の尽きであった。へぇ、という声が耳元で聞こえて振り返ればそこに、にたにたと新しい玩具を見つけた子供の笑顔をした沖田さんがいたのだ。……子供はこんな黒い笑顔はしないか。



すべてはここから



「山崎退くんはなまえちゃんが好きなんですかー。へぇ〜そーかー。あーなんか腹へってきたなぁ。…パン食いてぇな。」
「な、なんで俺が…!」
「なまえー!ちょっとこっち来てくれねぇですかィ?」
「ぎゃーああ!!買ってきます買ってきます買ってきます!!!!」


パシリを渋った俺に、沖田さんは追い討ちをかけるかのように晴れやかな笑顔でなまえちゃんの名前を呼んだ。なまえちゃんは不思議そうに振り返って沖田さんを見ている。そんな姿を見ただけで俺の心臓は高速で動き始める。なまえちゃんがこちらに来る前に俺は教室を抜け出し購買へ走り出すことに成功した。さらに後ろから、沖田さんのあんぱん以外で。という台詞も追いかけてきた。

くっそう…なんで俺なまえちゃん見ながら可愛いなんてなんで口に出して言っちゃったんだろう!?でもさっきのきょとんとした顔のなまえちゃんも可愛かったな、なんて思いながら適当に掴み取って買ったパンがあんぱんで、教室に入る直前にそれに気付いた俺は、もう一つパンを買いに戻ることになってしまった。


「…沖田(さん)め…」

あんぱんウマイんだからあんぱんでいいだろうが、とか、ぶつぶつ文句を言いながら教室に入ると、俺の席付近にいたはずの沖田さんの姿が消えていた。代わりに、なまえちゃんが立っていた。


「あ、山崎くん。」
「なまえちゃん!?」
「沖田くんがね、パンは俺の机に置いといて下さいって言ってたよ。」


にっこりと笑うなまえちゃんが言った台詞は、多分沖田さんが言った台詞をかなり丸くしたものだと思う。なんで事実を知ったあとになまえちゃんに伝言を残すんだ…あのサディスティックめ……。出来るだけ自然を装い、分かった。と返事をする。


「山崎くんって…優しいんだね。」
「へ?」


沖田さんの机にパンを置いて戻ってくると言われた言葉。思わず気の抜けた返事をしてしまう。


「沖田くんが他校生にカツアゲされちゃって、今月のお小遣いなくなっちゃったからお昼、奢ってあげたんでしょう?」
「………へ?カツアゲ?」


理由を聞いてもっと間抜けな声が出た。何も言わない俺になまえちゃんは、少し顔を赤らめて、山崎くんのそういう所、すごく好きだな…私。と言った。……え?好き?なまえちゃんが?俺を?


「なまえー!次移動教室だよ!置いてくぞー。」
「ま、待ってー!じゃあ、またね。」
「あ、うん。また。」


笑顔でなまえちゃんを見送る。そして俺は沖田さんの机の上に、あんぱんもさらに追加した。サディスティックの優しさが俺となまえちゃんを近付けたなんて言うのは癪に障るから、パン2つで感謝の気持ちにしようと思う。





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title僕の精
多分このあと沖田あんぱんはいらねーとか言われて投げ返される。


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