WJ+α | ナノ



憂鬱だ。いきなり難しい漢字から始まって申し訳ないけれど、今日は水曜日。憂鬱だ。私の持ち物は雑巾にバケツ、ほうきにちりとり。これらを毎日持って仕事をしているのに、水曜日だけは重く感じるのはやっぱり気持ちの問題だろうか。向かうは水曜日のお掃除区域、ベルフェゴールさまのお部屋。

ノックをする。返事が返ってこないことを心の底から願った。それはもう強く強く。
なぜ私がこんなにもベルフェゴールさまを苦手にしているのかというと、意地悪なのだ。物凄く。私が掃除している横で片っ端から汚していったりは当たり前。基本的に悪口の嵐。ブスだのデブだの気が利かない、ドジ、のろま、まぬけ…そんなことを散々言われるのだから嫌いや苦手にならないことの方が無理な話である。でもここ最近は姿をお見かけしていない。長期の任務についているのかもしれないなあとぼんやり考える。



〈人は気づかないうちに恋に落ちる動物である〉



「あ……れ、?ほんとにいらっしゃらない…?」


返ってこない返事に私はどきどきしながらドアノブを回して中に入る。一人で寝泊まりするには広くて豪華過ぎる部屋には動く影はない。


「や、やった!手早く終わらせようっ!!」
「だーれが、だーれの部屋の掃除を手早く終わらせるって?」
「!!」


声に振り向こうとすれば首に冷たい…ナイフの感覚。


「べ、ベルフェゴール、さま…」


帰ってらしたんですねと、ひきつった笑みを浮かべた私に舌打ちをひとつして、ナイフを離し、ベットに倒れこんだ。


「ベルフェゴールさま!?どうなさったので、っきゃあ!」


いつもと違う様子に、あわてて近寄ると、いつもと同じように笑うベルフェゴールさまと目があって、腕をひっぱられてベットにダイブする。


「しし、何、なまえ。まぬけでバカでドジでブスのくせに王子を心配してるわけ?生意気。」


私を抱き締めたままベルフェゴールさまはそうおっしゃる。私が慌てて体を起こそうとしてもベルフェゴールさまの力にはとても敵わない。


「なっ!なんともないなら離して下さい!」
「嫌だ。なんともないわけねーじゃん。」
「え、やっぱりどこかにお怪我を…!?」


ちらりと見えた体には傷ひとつ無いように見えたけれど、他に痛いところがあるのだろうか、敵に傷つけられてしまったのだろうか、不安が胸をよぎる。


「…なまえと会えなくて寂しかった。」
「…………え!?」


驚きすぎて大声を出したあと、ベルフェゴールさまから起き上がる。今度は、ベルフェゴールさまも力を抜いていたようで力負けすることはなかった。なんだよ、文句あんのかブス。と少しだけ赤く染まったようにも見える顔で悪態をつかれても、いつもみたいに嫌だなあとは思えなかった。


「わ私も!さ、寂しかっ…たです、…多分。」


口をついて出た自分でも予想外の言葉に、ベルフェゴールさまは一瞬だけ動きを止めていつもみたいに笑うのだった。



---------------
長くなったのはベルの名前のせいだと主張する。
ヴァリアー×メイドは萌える!




×
「#幼馴染」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -