昼食を買いに出かけて、お目当てのピッツァを買えたオレは、意気揚々とアジトに帰ってきた。いつもちょっとでも遅れて店に行ってみようものなら、跡形もなく売れ切ってしまっているオレのお気に入りのピッツァ。今日は運よく、早く店に行くことが出来たから、三切れも買うことが出来た。一切れはオレの分、もう一切れは、ブチャラティの分。ブチャラティもここのピッツァが好きだからな!喜ぶだろうなァーと、ブチャラティが笑う姿を思い浮かべてオレはニヤけてしまった。そして最後の一切れは、なまえの分。 なまえは最近、オレたちのチームに配属された女の子だ。なんでも記憶をほとんど失ってしまって組織に拾われたらしい。組織が行く当てのないただの女の子を拾うわけがないから、多分スタンド使いで、組織に役立つと判断されたからチームに配属されたんだろう。多分スタンド使いというのは、オレたちはなまえのスタンドを一度も見たことがないからだ。なまえにオレたちのスタンドは見えているみたいだが。セックス・ピストルズとも、嫉妬するくらい仲良くしている。ちなみになまえのスタンドは、彼女の生命のピンチにならないと発動しないらしい。なぜそんなスタンド使いが組織に必要だと考えられたのだろうか…とブチャラティは不審がっていたが、オレにはどうでもよかった。 なぜならなまえはすげー良いやつだったからだ。全てのひとや物に対して優しく、よく笑い、頭はいい、それでいていつも控えめで、そして、そして……つまり、とても魅力があるということだ。 なまえもこのピッツァ気に入ってくれるといいなァ!と扉を開く。アジトには、ミスタとフーゴとブチャラティ、なまえがいた。ピストルズに昼食を与えているミスタと、新聞を難しそうな顔で読んでいるブチャラティ以外の2人から、「おかえりなさい」と声をかけられる。それに応えると、ブチャラティも新聞から顔を上げ、「おかえり」と言った。 「へへー!ブチャラティ、これ好きだろ?ブチャラティの分も買ってきたんだ!」 「これは…いつもすぐ売り切れてしまうのによく買えたな」 「タイミングが良かったんだ」 「グラッツェ、ナランチャ。いただくよ」 予想どうり、口元をほころばすブチャラティにオレもつられて笑顔になる。そして、いつもオレが座る場所、なまえの隣の椅子に腰掛けて、包みを開けた。そして一切れをなまえに差し出す。きょとんとして、オレとピッツァを交互に見つめる姿は可愛くてもう少し眺めていても良かったけど、はやくなまえの笑顔がみたいという誘惑に負けて、「これウマいからなまえにも食わせてやりたかったんだ」と説明した。 「じゃあ、これはわたしに?」 「ウン」 「グラッツェ…!ナランチャ!」 ふにゃんと頬を緩ませたなまえはオレの想像を遥かに超えた可愛さで、一瞬時が止まったかと思ってしまった。そのまま、オレのピッツァを持つ手をすり抜けて、頬に唇をちゅっと押し当てたなまえは、ピッツァを受け取って、すごく嬉しそうにほうばった。……え、頬に触れたのはなまえのくちびるで、それで、頬ってのはオレの頬で、え、?なまえの唇が?オレの?頬に? 「すっごくすっごく、このピッツァ美味しいわ」 本当にありがとう、ナランチャ、と、笑顔で付け足したなまえを見つめながら、オレ、女の子の気持ちってわからないと思ってたけど、なまえはそれ以上に男の子の気持ちをわかっていない、とぼんやりと思うのだった。これじゃあ、ますますなまえのことをすきになっちまうじゃんかよ。 title.僕の精 |