短いおはなし 2013 | ナノ

 リーダーの頭巾被ってみたいなあ、昨日終わらせたばかりの報告書をリーダーに確認してもらっている間、ホルマジオの淹れてくれたエスプレッソに、お砂糖を混ぜながらなんの気なしに言ってみた言葉にリーダーがぴくりと反応した。あれって頭巾で合ってるのかな、おしゃれな帽子?わたしはリーダーの大事な頭を包み込むものに対して、興味がむくむくと大きくなっていくのを感じた。あ、決して下品な意味じゃないからね。強くてかっこいいリーダーが身にまとった茶目っ気溢れたデザインの頭巾には何か意味があるのだろうか。


「あ!」
「…なんだ、いきなり大きな声を出すな。」


 驚くだろう、とびっくりするくらい冷静にわたしを叱るリーダー。それに対してごめんなさい。と素直に謝ったあとで、その頭巾は誰か大切な人にもらったものなの?と聞いてみる。リーダーは無視を決め込もうとしたらしいけど、わたしの、こうと決まったらやり通すという性格を知っているから、ため息まじりに、「別にそういった思い出がある物じゃない」と教えてくれた。


「ふーん、わたしもそれ被ってみたいな!」
「断る」
「ええ〜いいじゃん!」


 ばっさりと断られたわたしも簡単には引き下がれずに、なんとかして、頭巾を脱がしてやろうと試みた。今度リーダーにも兄貴みたいにパーティ潜入しなきゃいけない仕事入るかもしれないし、新しい目立たない帽子を仕立ててくるから、とか汚れているから洗ってあげるとか、後ろ前反対だよとか、思いつくもの全て言ってみたけれど、リーダーは黙々と報告書を読み進めていくだけで、まったく反応してくれない。もう諦めて、ホルマジオと猫ちゃんと遊ぼーかな、とホルマジオの方に目をやってピンと来た。これが駄目なら諦めよう、とリーダーに向き直る。


「リーダーがその頭巾被ってるのって、もしかして……ハゲてる?」
 

 そして、釣り針に大きな魚がかかった。

 うっわーリーダーって体も大きいけど、頭もやっぱ大きいねぇ!無言で差し出された、頭巾を早速頭に装着したわたしは感想を叫びながらホルマジオに見せにいく。ホルマジオも、ぶかぶかじゃねえーか、と苦笑いを浮かべた。そして、リーダーが四六時中身につけている頭巾にしては、想像したよりもすごくいい匂いがすることに気がつく。もしかして何枚も替えをもっているのかなぁ、なんて想像して吹き出してしまった。クローゼットびっしりこの頭巾だったりして!そんな勝手な想像を膨らませるわたしに、お…おい!と、焦った声で呼びかけたのはホルマジオだ。どうしたのとホルマジオが指差す方を見ながら聞くと、そこには、窓から差し込む光を反射させ、まるでこの世の物とは思えない美しさを放つ髪の男が、スッと通った鼻筋を下に向け、男らしさとセクシーさを併せ持った首筋やうなじを主張しながら熱心に紙を見ているではないか。


「ナニアレ」
「ダレアレ」


 青ざめた私たち2人は、顔を見合わせる。わたしが自分の出せる最高スピードでお返しさせていただいた頭巾をもう一度被ったリーダーは、元のリーダーに戻っていて心の底からほっとした。ちょうど任務から帰ってきたイルーゾォに、興奮のあまりおかえりも言わずにこのチームで一番の男前は誰だと思う?と聞いてみる。プロシュートじゃないか?と一呼吸入れて答えたイルーゾォの肩をわたしとホルマジオが叩く。イルーゾォ、違かったんだ。真の男前ってやつは頭巾で男前を隠していたんだ。

 


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