2012短いおはなし | ナノ

容姿端麗で、成績優秀、冷静沈着で、誰にでも優しい…とまでは言えないけど、人当たりはいい方だと思う。そんなほぼ完璧な佐久間くんが、わたしの彼氏さんです。


「あれ、まぁた佐久間への愛妻弁当ですか?」
「えっと……うん、」


四時間目の授業が終わって、机に2つのお弁当を準備しながら、そわそわとしているわたしに友達の一人が笑顔を浮かべながら近付いてきた。その表情からして、からかわれることは予測がついていたけれど、いざからかわれてみるとやっぱり恥ずかしい。きっと今、顔赤いよね…と思いながら返事をすると、他の友達も何々?と言いながらわたし達に近寄ってくる。


「ほらー見てよ!佐久間にお弁当作ったんだって!」
「すごっ!なまえたちラブラブだねぇ、」
「ウィンナーはペンギン型だったりして!」


まさかそこまではしないでしょ〜と笑う彼女達に、わたしは愛想笑いを浮かべるしかなかった。もちろんウィンナーはペンギン型である。恥ずかしすぎてカミングアウトなんてできるわけない。そんなやり取りをしていると、教室の後ろの扉がガラリと開いて、佐久間くんが顔を覗かせた。やっぱりいつ見てもイケメンだ。「王子様のお迎えがきたね」と茶化すみんなに手を振って、佐久間くんの元に行くと、友達の冷やかす声を少しも気にしていない様子の彼に部室行こうぜ、と促された。


サッカー部の部室にはこうして何回か入ったことがあるけど、よくあるイメージの運動部特有の汗くさい部室とはまったく違くて、綺麗で、なんだかスタイリッシュな感じだ。昨日、佐久間くんにはメールでお弁当持っていくということを話していたから、佐久間くんは「なまえの弁当、早く食べたい」とベンチに座って嬉しそうに隣を叩いた。そんな可愛らしい佐久間くんに思わず笑みをこぼしてしまう。


「はい、どうぞ。」
「ありがとな。」


すばやく包みをほどいて、蓋を開けた佐久間くんは、一拍置いてから、おおお!と声をもらした。わたしがその様子を見守っていると、顔を上げた佐久間くんがキラキラした瞳でわたしを見つめる。「すごいななまえ!ペンギンがいる!」すごいすごいと手放しで喜ぶ佐久間くんが可愛くて、佐久間くんファンの人達はみんな彼を『かっこいい』とか『クール』だなんて言うけど、わたしは佐久間くんの『可愛い』部分も知ってるんだ…って思えて独占欲が満たされた気分。そんなことを考えている間に佐久間くんはお弁当を嬉しそうに口に運んでいた。

あんまりじっと見てたら変に思われるし、わたし自身のお弁当を食べる時間がなくなるから佐久間くんをチラ見している場合じゃない、とは頭では分かっていても、わたしの作ったお弁当を食べてくれている佐久間くんを見ているとなんだか胸が熱くなって、目が離せない。


「…っ……お前な…」


視線に気づいた佐久間くんがわたしの方を見て一瞬頬を染める。「……お前さ、どんな顔で俺の方見てると思う?」そう尋ねてきた佐久間くんにわたしが何か答える前に、お互いの唇がくっついた。


「キスしたくなる顔で俺のこと見てる。」


佐久間くんの方を直視出来なくなって逸らした視線の先には、ちょっといびつなペンギンさんウィンナーがあった。


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