2012短いおはなし | ナノ

※ゆめっぽくない

最近、誰かに見られているような気がするな…と思い、振り返って見る度にそこには咲山がいる。奴は元から目付きが悪いし、そんな気がするだけかもしれない、偶然そこに立っているだけかもしれない、と思うようにしていたが、それが練習の間、何度も、ということになれば話は別だ。俺は真実を確かめるために休憩時間に咲山に話しかけてみることにした。


「おい、咲山。」
「なんだよ、お小言か?さっきのボールは上手く回せただろうが。」
「なぜ俺をそんなに見つめるんだ。」


咲山の言葉を無視して単刀直入に話を切り出せば、近くにいた成神がぎょっとした顔をした。…何をそんなに驚くことがあるんだ?咲山は咲山で、はあ!?とすっとんきょうな声を上げて、デカイ声で意味深なこと言ってんじゃねーよ!と怒鳴った。そして、ちょっと来い!と俺の体を引っ張っていく。それを見て成神はさっと顔色を青くした。


「咲山さんまじなんすか!?」
「んなわけあるかタコ!」







休憩中のみんなからは見えない位置まで連れてこられてやっと解放される。咲山の意味のわからない行動の数々に俺が混乱していると咲山がため息混じりに口を開いた。


「どうやったら…タッパが手にはいるんだよ。」
「タッパ……?」


どうやら咲山は世の中の流通事情を知らないらしい。俺は出来るだけ優しい声を出すようにしながら、スーパーマーケットや百均に行けば買えると思うぞ。と説くと、咲山は顔を赤くした。


「バカにしてんのか寺門…そのタッパじゃねーよ!身長のタッパだっつーの!」
「身長…、」


顔を真っ赤にして怒る咲山は確かに俺よりかなり小さい。身長があまりないのは今に始まったことじゃないのに、なんでそんなに急に焦っているのだろうか…と少し考えを巡らしながら、この返答が一番無難だろうと考え、牛乳を飲めばいいんじゃないか?とアドバイスしてみた。それを聞いて、あからさまにがっかり、というか、期待はずれだという反応を見せた咲山。まあそりゃコツコツ飲めば増えるかもしれねーな、とため息をついた。

二人でグラウンドへ戻っている途中で、はっと気付く。そういえばこないだ辺見が咲山に彼女が出来た…!と大騒ぎしていた。もしかして、そのせいだろうか、と問うと咲山は黙っていた。…咲山の無言は肯定と受け止めていいだろう。グラウンドに入る前に、俺は咲山にこう告げた。



「背がどうのこうのじゃなくて、(咲山の彼女は)咲山自身を好きになったんだ。だからそんなに気にすることはない。」
「…………おう」


それをしっかり聞いていた成神が、また勘違いして、咲山がキレたのは言うまでもない。


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title僕の精


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