2012短いおはなし | ナノ

「海堂くん、緊張してる?」


思わず聞いてしまったけれど、海堂くんが緊張しているのは、聞かなくたって一目瞭然だった。わたしの部屋の隅の方で正座をして、背筋をぴんと伸ばし、手を握りしめているのだ。これを緊張以外のなんと言う心理状態に当てはめろと言うのだろうか。それに、一緒に帰ってくるときにはしていなかったバンダナをわたしがお茶とお菓子を取りにリビングに降りている間に、結んだらしい。制服姿にいつものトレードマークはかなりミスマッチだ。


「そ、そそそんなことはねぇ!」
「ふふ、そっか。」


女の子のわたし以上に初々しい反応の海堂くんに思わず笑みがこぼれてしまう。可愛い、なんて思ったことがバレたら怒られるのは目に見えてるから、わたしは何事もなかったようにおぼんを机に置いた。飲む?とコップを差し出すと、すまねぇと一言断った海堂くんは一気に中身を飲み干した。…やっぱり緊張してるんじゃない。相変わらず正座を崩そうとしない海堂くんに近寄ると、近寄った分だけ離れてしまった。え、なんで?気のせいかと思ってもうひとつ近寄ると、やっぱり距離が縮まらなかった。


「海堂くん?」
「あ、あ゙ぁ?」
「逃げないでほしいなあ、」
「に、逃げてねぇ!」


改めて近付いてすぐ隣に体育座りになると、海堂くんはあからさまに体を固くしていた。それを見てから、手をゆっくり伸ばして海堂くんによって固く握りしめられた拳に重ねてみる。「海堂くんって女の子の部屋に来るの初めてだったりする?」「………そうだ。」「そっか、あはは、なんか嬉しいな。わたしも男の子を部屋に上げたことないから。」初めて同士だね、と笑うと、ふっと肩の力を緩めた海堂くんがぎこちなくではあるけれど、微笑み返してくれた。膝崩していいか?と尋ねる海堂くんに頷く。いつの間にか手は離れていたけれど、ちょっとだけ触れ合う肩や足が自分のものじゃないみたいに熱くなっていた。海堂くんに気を取られて気づかなかったけど、どうやらわたしも十分に緊張しているらしい。


「海堂くん、」
「なんだ?」
「わたし海堂くんのこと好きになれて良かった。」
「なっ…何言って…!?」


なんとなく思い付いたままのことを口に出してみれば、それはすごく恥ずかしい内容のもので、自分の顔も火照ってきてしまった。さて、これからどんなふうに二人の時間を過ごそうか。まず、バンダナを外してもらって戦闘武装を解除してもらわなきゃね。


title僕の精


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