2012短いおはなし | ナノ

学年いちの美人になって、手足が長くてスラッとしたスタイルになって、目鼻立ちもはっきりした顔…つまり今のわたしと正反対のわたしになれれば、彼は、わたしを女の子として見てくれるかな、…好きになってくれるかな。


。。。。



「みょうじ〜やべぇよお…俺ホシュウくらっちまってよお…こんなの馬鹿な俺が解けるわけねーってんだよッ!」
「見せてみて、」
「ン」


堂々と自分を馬鹿と言うこの男は、虹村億泰。こんなナリをしているが、不良というよりはヤンチャで無邪気な小学生がなにかの間違いで高校に入学したという表現のほうが正しい。


「あ、これは……」
「これは…?」
「億泰くんの実力じゃ120%解けないわ。ま、実力って言うのもはばかられるような知識じゃあね。」
「〜〜ッ!!言いたいこと言ってくれやがるなあ!」


そして、真面目でパッとしない女としてクラスに存在しているわたしが何故億泰くんとこのように会話する仲なのかというと、…それは話すと長くなるのでやめておきましょうか。とにかく、億泰くんとわたしの関係は知り合い以上、友達未満…みたいな感じ、だと…思う。億泰くんが実際に口にしたわけじゃないからわたしの勝手な見解だけれど。


「なあなあ、頼むみょうじ!解くの手伝ってくれ!このままじゃ一生をこの教室で過ごすことになるぜ俺はよォー」
「大袈裟よ」
「お前のピカイチな頭なら楽勝だろ!?な?」
「ちょ、!?やめて!わかった、わかったから!やるから!」


億泰くんの声は大きい。つまり、わたしと億泰くんの会話のうち、億泰くんの台詞は教室にいる全員に丸聞こえなわけである。どのクラスにも、勉強に命をかけ、成績を常に気にして生活している人種が一人はいるわけで、そんな方々に聞こえるように超がつくほどおばかな億泰くんが、真面目なだけで別に頭がいいわけではないわたしに対して『ピカイチな頭』とか言っちゃうもんだから、一瞬にしてその人種からの殺意がわたしに向かってきたのだ。

わたしだって命は惜しい。…というわけで今日の放課後は、億泰くんと居残ることになったのだった。「もお〜予定だだ崩れだよ〜」とは言いつつも、わたしに予定なんてものはなくて、むしろ億泰くんと一緒にいれる時間が増えてすごく嬉しかったりする。ああもう、なんで素直になれないのかな。そんな後悔に、内なるわたしが頭を抱えている。


「ありがとな!みょうじ!恩にきるぜ!」


億泰くんに笑顔でそう言われてしまえば、なんだかもやもや考えていたことがアホらしくなってしまうのだから、わたしも相当な馬鹿、みたいだ。



『わたしの一番だめで可愛い部分は君にコントロールされている』
titleにやり


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