2012短いおはなし | ナノ

背中がお父さんみたいと笑うと、鉄平くんは、そう?と頬を緩ませた。隣を歩く順平くんがそこは喜ぶポイントじゃねーだろ、とツッコミを入れる。鉄平くんの背中はお父さんみたいだけど、順平くんのそのしっかりした性格はお母さんみたいだ。わたしが順平くんを見つめながらそんなことをぼんやり考えていると、ふいに鼻をつままれた。


「ふぎゃ!」
「今度は俺のことを『お母さんみた〜い』なんて言うんじゃねーぞダアホ」


な、なんで分かったんだろう…もしかして順平くんってエス「俺はエスパーじゃねーからな」……まさかここまで読まれるとは。むむむと唸ったわたしに分かり易すぎるんだよと順平くんは一言付け加えた。そんなわたしたちのやり取りをいつものようにのんびり眺めていた鉄平くんはゆっくりと口を開く。


「日向、なまえはもう少し、しゃべり方可愛いぞ。」
「もう少し!?」


てことは、順平くんがもう少し可愛いしゃべり方したら、わたしと似ていたってこと!?それは人権の侵害だと主張すると鉄平くんはからからと笑った。「日向、もっかいなまえの」「もう二度と真似するか!」…やっぱりこいつエスパーかもしれん、と同級生に疑いの眼差しを向け出す鉄平くんに順平くんは大きなため息をついた。


ふと気付くと目的地の体育館は目の前で、わたしの両側を歩く二人の歩幅が自然と広くなる。身長差が軽く20センチはある二人が歩幅を大きくすればわたしが置いていかれるのは明白なわけで、向かってる先は同じはずでさっきまで一緒に会話していたのになんとなく寂しくなる。二人とわたしの物理的距離は遠くなっていく。


「なーにやってんだなまえ。」
「ほら、部活始まるぞ?」


突然の二人の声に顔をあげると、前方には、わたしの方を振り返っている二人の顔。わかってる。二人はいつだってわたしを忘れたりしない。……だって、仲間だから。


「わたし二人のこと大好きだよ!」


急に嬉しくなって、二人の腕に抱きつけば、白昼堂々と二股宣言してんじゃねーよバカと順平くんに小突かれた。鉄平くんはあいかわらずにこにこしている。やっぱり二人はわたしのお父さんとお母さんみたいだ。単純なことで元気を取り戻した単純なわたしが「今日の部活も張り切っていこう!」と突き出した拳に、わたしのより一回り大きな二人のそれが重なった。なんだか少しだけ、くすぐったい。



(黒子のバスケ/木吉鉄平と日向順平)
title 僕の精


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