※名前変換タグのまま
※未完
「うむ、今日の練習は以上だ。油断せずに片付けよう!」
手塚部長の声にみんなが大きな声で返事をして、片付けに取りかかる。私も用具を元の場所に戻して、ドリンクのかごを洗い場に持っていく。何本ものボトルを洗うのに水を使うのは、きついものがあるけど、部員のみんなも乾先輩の考えたきついメニューをこなしていることを考えると、マネージャーの私が弱音を吐いてなんかいられないのだ。それに優しい先輩たちが冬はお湯を沸かしてやれって言ってくれる。
「…みょうじ」
「あ、海堂くん。」
「手伝う。」
「大丈夫だよ、海堂くんにも片付けがあるじゃない。」
やんわり断ると、あの超低音ボイスで「もう終わった。」と返ってきた。語尾に文句あるかゴラァってついてるような気がした。…あくまでも気がしただけ。
「じゃあ…お願い。ほんと言うと…けっこう助かり、ます。ありがとう海堂くん。」
「………構わねぇ。」
軽く頭を下げると、海堂くんは小さく返事をして作業を始めた。他の人も手伝いを申し出てくれることもあるけれど、実は海堂くんが手伝ってくれるときが一番安心する。なぜなら一年生のコは泡を残していくし、…あ、それは桃ちゃんにも言えることだけど。乾先輩は洗った容器に新しい乾汁を入れてきたりするからである。(そして私で新作を試そうとするのだ)一方、海堂くんはとても丁寧に手早く洗ってくれる。へたしたら私より上手い。
「あれ、海堂。みょうじさんを手伝っているんだね。」
「うす、不二先輩。」
「……そうか。そうだね、やっぱり海堂が適任なんじゃないかな。」
「な、何がっスか?」
何かに納得したように、うんうんと、いつもの笑顔で頷いた不二先輩は、何も分からない海堂くんと私に、あと少しで分かるよと言い残して去っていった。私たちは何か釈然としないものを感じながら、ボトルを洗った。カゴや用具を片付け終わって最後の挨拶のために一旦集まる。いつもはそこで1日の反省と明日の予定を手塚部長が話し、活動は終了となる。しかし今日はまだ話が続いた。
「今日、青学周辺に不審者が現れた。」
「えっ!!」
「被害にあった女生徒もいる。今日はいつも以上に油断せずに家路につけ。複数で帰ることが望ましいな。」
手塚部長の発言に私は一気に憂鬱になる。変質者…会ったらどうしよう…。そんなことを考えていると手塚部長がこちらを見ていることに気付いた。
「みょうじ、お前は一緒に帰る友人はいるのか?」
「あ、えーと…もう帰っちゃってるかと思います…。」
いつも遅くまで練習をする青学テニス部。私にいくら仲がいい友達がいるとはいえ、最後まで待ってもらうのは私にも気が重い。首を横に振る私を見て手塚部長はふむ…と言って考え出した。
「手塚。」
「なんだ、不二。」
「みょうじさんを送っていくのは海堂が適任だと思うんだ。」
「えっ!?ええっ」
私が不二先輩の提案にびっくりしている間に、周りの先輩方はどんどん話を進めていて、
「そうだそうだ!海堂みたいなこっわーい顔がなまえちゃんの隣にいれば安心だにゃー」
「確かに…隣に強面の男性がいると女性が痴漢や変態の被害にあう確率はかなり低いものになるだろう。」
「あ、いや…でも…!」
「うむ。どうだろう、引き受けてくれないか?海堂。」
こんなテンポの良い流れで海堂くんの前まで運ばれてしまった。私の抗議には気付かないのか、それとも無視なのか、いずれにしても部長と三年生の先輩方の華麗なスルースキルには、私なんか太刀打ち出来ないということがはっきりと分かった。
「うっス。分かりました。」
でも、そう言う海堂くんの返事が聞こえて、私の心の中は、申し訳ないなあという気持ちと、拒否されなくて良かったという気持ちで複雑なものだった。
「良かったなあマムシ!」
「うるせーぞ桃城。あとマムシって呼ぶんじゃねぇ。」
部室に入った途端に首に腕を回して、にやけた表情を向けてくる桃城の腕を振り払う。冷静を装っているが、先程みょうじ交わした、
「じゃあ部室前で、…待ってる。」
「う、うん!出来るだけ急いで着替えてくるから!」
そんな何気ない会話に心臓がバクバクしている。一応急がなくていいとは伝えたが早めに着替えるとは俺を待たせない為だろうか、みょうじらしい発言に部室の中だということを忘れて口角が上がりそうになったのを慌てて押さえる。
「海堂!みょうじちゃんと仲良くなってくるんだぞっ」
「さっきみたいに優しくすれば僕は大丈夫だと思うよ。」
「一緒に下校することで男女の仲が深まる確率は…100%だ、海堂。自信を持て。」
「っかー!ついにマムシも青春を謳歌する年齢かあ!俺も負けらんねーな、負けらんねーよ!」
口々に俺につっかかってくる面々を軽く流して俺もみょうじにああ言っておきながらいつもよりスピードアップして着替える。しかし部室を出る直前、越前にかけられた言葉には思わず反応してしまった。
「送り狼にはならないで下さいよ、海堂先輩?」
「な、なななるわけねーだろ!!!!」
バタンと閉めたドアの向こう側で、どーだか、とか、マムシやるつもりか〜?とか言う言葉が聞こえてきたので、戻って一発喰らわせてやろうかと真面目に考えていた所になまえが走ってきたから、それは中断した。
×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -