2011X'mas | ナノ




松野くんとのデートの日はいつだって気合いを入れておしゃれして、言動にも気を付けて少しでも理想の女の子に近付けるようにがんばるけど、でも今日はもっともっとがんばった。だって聖なる夜、クリスマスデートだもん。プレゼントも悩んだけれど、サッカーした後に使えるタオルを送ることに決めた。待ち合わせ場所に向かう途中、すれ違う男の人と女の人はみんな手を繋いだり腕を組んだりとても距離が近い。私も松野くんと……なんて考えて、勝手に胸をどきどきさせてる私。…変人かもしれない。待ち合わせ場所が見える場所まで出てきて、松野くんがもう待っていることに気が付いた。慌てて駆け足で近寄ると、松野くんは、別に走らなくていいのに。と笑う。


「ごめんね、待ってるの寒かったよね?」
「そんな待ってないよ。」


それに、今日はみょうじが僕のためにどんな可愛い格好してきてくれるのかな、とか考えてたから全然退屈しなかったし、と悪戯っぽくささやかれた松野くんの言葉に私は咄嗟になんの返答も出来なかった。松野くんの言葉は時々表現がストレートすぎて、どうしたらいいのかわからなくなってしまう。「あはは、顔真っ赤だ。」しまいには可愛い、なんて頬をつつかれてしまった。


「も、もう!からかわないで…!」
「はいはい。」


私の言葉をいつものように適当にあしらった松野くんは、じゃあ行こうか、と私に手を差し出した。その流れがすごく自然で、全然気取っていなくて、松野くんが王子様に見えてしまう。でも、私だって今日は負けないんだ。待ち合わせ場所にくる途中で目にしたアレ、やるなら今しかないもの。私はスッと松野くんの手を追い越して、腕を絡めた。へへ、どーだ!私だって照れさせられてばかりじゃないもんね。

そう思って見上げたら、僅かに頬を染めた松野くんが手で口元を押さえていた。初めて目にするそんな彼の姿に、何故か私も一緒に照れてしまう。これじゃ、ただのバカップルだ。恥ずかしすぎる。


「なまえ、反則だからそれ。」


松野くんの珍しく柔らかい笑顔が一瞬だけ目に映って、夜風にさらされて冷たかった唇にもっとつめたい何かが触れた。うそ、キス…?しかも名前呼び?突然起こった出来事に私がぼんやりしていると、松野くんはいつもの意地悪な顔で、私を笑った。クリスマスが奇跡の夜でも、私が勝つのは難しいらしい。


「僕のことも名前で呼んで?」
「………く、くーすけ…君」
「よくできました。メリークリスマス、名前。」



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