2011X'mas | ナノ




今日クリスマスイブだねぇ、とつぶやくと、同じベンチに並んで座る木暮くんにどーせ今日も明日もなんも予定ないんだろ?とあの独特な憎たらしい、でも可愛くて本気で怒れない笑い方で笑われた。ま、実際予定なんかないから言い返せないんだけどさ。寂しいわあ、と言いながら息をはきだせば、一瞬だけ空気が白くなる。なんではあ〜って息を出せば白くなるのに、ふぅ〜って息を出すと白くならないんだろう?と口に出そうとして止めた。自分でも幼稚だと思える疑問を木暮くんが馬鹿にしないわけないもの。そんなふうにしてあの笑い方を回避している時に走ってくる足音が耳に届いた。


「木暮!みょうじ!お待たせ!」
「おっせーよ!」


はあはあ、と息を切らす立向居くんに噛みつく木暮くんを私はなだめる。私と木暮くんと立向居くんは、15分くらい前に『負けた人がコンビニから肉まんを調達してくるじゃんけん』をした。勝者の私と木暮くんの二人で肉まんをまだかまだかと待っていた訳なのだけれど、すぐそこのコンビニなのに随分待った。遅かったね、何かあったの?と聞けば、立向居くんは眉を八の字にして謝ってきた。


「ごめん…」
「あ、あやまらないで!待った分美味しく食べられるもん!ね!木暮くん!」
「はあ?俺はもう体が冷えきっ」
「ね!木暮くん!?」
「………みょうじの言う通りだと俺も思う。」


落ち込む立向居くんをベンチに座らせてとりあえずみんなで肉まんをほうばることにした。肉まんの温かさが、かじかんだ手にダイレクトに伝わってくる。ちなみに立向居くんが遅かった理由は肉まんの温めがまだ終わってなかったかららしい。タイミングが悪かったねぇ、と慰めると、だね。と立向居くんは笑った。木暮くんは俺たちはその間外で待ちぼうけだぞ!と頬を膨らましていたけれど、肉まんを口にしたとたんそんな表情は消えてしまった。なんて現金な。三人でしばらく無言で肉まんをもぐもぐしていると、なんだか急に笑えてきた。何笑ってんだよ、と言う目でこちらを見てきた木暮くんの口の端に肉まんの具が付いていてそれもまたツボを突いてきたから困る。


「そう言えばさあ、みょうじ今日も明日も予定ないんだってよ〜寂しい奴だよなウッシッシ!」
「あ〜!立向居くんにまで言わなくたっていいじゃん!」
「え?そうなの?」


笑われた仕返しとばかりにちょっと恥ずかしい事実をバラされた。立向居くんは意外だなあ、なんて私にどんなイメージを持っているのか聞きたくなる感想を私に告げた。はいはい、もうどうせ寂しいクリスマスを送りますよーだ!と肉まんにかじりつくと、立向居くんが急に立ち上がった。


「明日、俺ん家でクリスマスパーティーしよう!」
「「は?」」


ぽかんとしている私と木暮くんに、立向居くんは「三人でクリスマスを祝ったらきっと楽しいよ!」と満面の笑みを向けた。思わず顔を見合いあった私たちにもじわじわと笑顔が広がっていく。「よーし!私はケーキ担当ね!」「食えるもん作れんのかよ?」「だれが作るって言った?私はケーキを食べる担当です!」「女のくせしてありえねえ!」「あはは、みょうじらしいね!」三人で明日のことをあーだこーだ言ってる時間も楽しいんだから、明日のクリスマスはもっと楽しいだろうなと思った。それと、木暮くんの口の端に付いてる肉まんの具は、いつカミングアウトしよう?


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