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はい!こちらナマエです!今大変な状況が目の前に広がっております!まず、経緯をお話しますと、掃除当番だった私はじゃんけんで負けてしまい、ゴミを捨てに来たのです。そして、大きな袋を両手に持ち、えっちらおっちらと歩く私を見かけた(かっこよくて優しくて声が素敵で紳士でそしてちょっぴり照れ屋さんな)飛鷹さんが声をかけてゴミ袋を一つ持ってくれたのです。しかも重い方を!やっぱり飛鷹さんは私の王子様です!そして、ぺちゃくちゃと今日の学校の話とか、あきおちゃんの話とかをしていたら、急に飛鷹さんに抱き寄せられてしまったのです!そのまま私たちは木陰に隠れました。その時は、ついに私も大人になるのか…!と感極まりましたが、飛鷹さんはすっごく低くて小さい声で、


「告白されてる」


と言いました。その言葉を受けて、私が飛鷹さんが見ているほうに目をやると、そこには綱海さんと染ちゃんがいました。そう!告白現場に鉢合わせてしまったのです!二人の前に立っている女の子のリボンの色を見ると、どうやらどちらも染ちゃんと同じ学年のようです。


「ひゃーすごい!告白ですよ!生!初めて見ました!」
「ナマエうるさいぞ」
「はーい」


飛鷹さんにたしなめられて私は口をつぐむ。とりあえずこれからどうなるのか…期待の新人アナウンサーナマエ!実況頑張ります!!


「わ、わたし…綱海先輩のことが好きです!付き合ってください!」

「私も…染岡くんのことずっといいなって思ってて、そしたらこないだすごく優しいっていうのも知って、……大好きになっちゃったの…。付き合ってくれませんか?」


おお!まずは女の子二人からの告白です!直球ですねー素晴らしい。そして染ちゃんの優しさがやっと周りに伝わるようになったんだなーって私は安心しました。


「なんて言うんでしょうか二人とも…!」
「さあな」


わくわくしながら飛鷹さんに話をふると、肩をすくめられた。ん…待てよ…もし、二人がオッケーしちゃったら、二人の私と飛鷹さんとあきおちゃんと過ごす時間はなくなっちゃうの?お昼も一緒に食べれないし、カラオケも、勉強会も出来なくなっちゃうってこと?そう気付いて、私のわくわくした気持ちはどん底に落とされた。


「どうした?」
「う………」


もし、二人が私の毎日から消えちゃったら…って考えたら悲しすぎて、私はぎゅう、と飛鷹さんの制服を握った。「そんな泣きそうな顔するな、」「…でも」二人がいないと寂しい…と漏らせば、飛鷹さんもこくりと頷いた。私たちのそんなしんみりムードをぶち壊したのが綱海さんの大きな声だった。


「ありがとな!でも、今はそういうのいいやって思ってんだ。気持ちはすげー嬉しいよ、サンキューな。」
「綱海先輩…」


綱海さんに告白した女の子が涙ぐむ横の木陰で、私と飛鷹さんも「綱海さん…」「綱海…」とつぶやいていた。っていうより綱海さんが男前すぎて眩しいです。そして、染くんもたどたどしく「悪い、……今は俺も……彼女、とか考えてない、」と言葉を紡いだ。染くんに断られた女の子は泣いてしまって、綱海さんに告白した女の子が慰めながら教室棟の方に帰っていった。


「飛鷹さん……」
「?」
「不謹慎ってわかってるんだけど、ほっとしちゃいました…」


すると、飛鷹さんは小さく笑って頭を撫でてくれた。飛鷹さんの笑顔……素敵すぎる。ドラマの最終話みたいな展開だったのに、綱海さんがひょっこりと顔を覗かせたせいでおじゃん。


「なーにやってんだお前ら?」
「え!?あ……!その、」
「すまない。一部始終を見させてもらった。」
「飛鷹!ナマエまで!お前らなあ…」


染ちゃんも私たちの存在に気付いて、いつもの怖い顔で近づいてきたから、私と飛鷹さんはゴミ捨てがあるから!ととっとと逃げ出した。染ちゃん、説教怖いんだもん。


でも、染ちゃんたちが私から離れていっちゃう事の方がずっと怖いことなんだなあって実感しました。まだみんなでぐだぐだしてたいなあ、とナマエは思いました!実況おわり!

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