こねた | ナノ

「浴衣姿もかわいいな。」


これが、待ち合わせ場所にやってきた源田君の第一声だった。待っている間でさえ、心臓がバクバクで、死んじゃいそうだったのに、源田くんが恥ずかしげもなくそんなことを言うものだから、私は倒れそうになった。さらに、源田君は私なんかより浴衣が本当に似合っていて、私は目が離せなかった。私と同じように人を待っている女の子たちも、源田くんをちらちらと見ているのがわかる。こんなにかっこいい源田君が私の彼だなんて、嬉しいを軽く通り越して申し訳なさまで感じてしまう。


「あ、ありがとう。あの、源田くんも、浴衣すっごく似合ってる!」
「そうか?ありがとう。」


一度首を傾げて微笑んだ源田君はほんとうにとっても素敵だった。しぐさも表情もとても柔らかくて、同い年の男の子に使う言葉ではないかもしれないけれど、かわいらしいのに、急に差し出された源田君の手は、私のそれより、ひとまわり大きくて、ごつごつしていて、毎日の練習の証であるたくさんのマメがあった。


「えっ・・・手、あの、」どうしたの?という意味を込めて源田君を見つめる。私だってこの行動の意味にまったく見当がつかないわけではない。いつか読んだ少女漫画でこんなシーンがあったのもよく覚えているけれど、実際に自分がされてみると、本当に自分が考えていることで正しいのかとても不安になるものらしい。


「はぐれたら困るだろ?手、つなぐの嫌か?」
「嫌じゃない!です、」


食いぎみに答えた私に源田くんは微笑んだ。繋がれた手から私の源田くんへの溢れそうな想いが伝わってしまいそうで、ちょっとだけ怖かった。


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帝国全員と夏祭りに行きたかったけど鬼道さんでおわってしまった…
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