ドラマみたいな嘘でしょ…?とかそんな芝居じみた台詞は出てこない。私は風丸くんの一言であっけなくキャパオーバーしてしまったのだ。でも間抜けなことに自然に口をついて出たのが、私も風丸くんがトラックを走り抜ける姿がすきだったの、という言葉。風丸くんは数秒前に私に向かって同じような台詞を平然と言ってのけたくせに、私の言葉を聞いて、顔を真っ赤にさせた。女の子が男の子にこんなことを思うのは失礼なのかもしれないけれど、風丸くんを可愛いと思った。
「でも、サッカーしてる風丸くんからも目が離せなかったの。多分、私…風丸くんが好きなんだね。」
告白なんかする予定はなかったのに、これまた自然と口をついて出た私の本音。声に出してみたらまた実感した。私は走ってる風丸くん『が』すきなんじゃなくて、走ってる風丸くん『も』含めて風丸くんがすきなんだということ。私が微笑みかけると風丸くんは慌てて言葉を繕う。
「俺も、別にグラウンドを見てるミョウジさんが好きなわけじゃなくて、その、全部含めてすき、なんだ…多分。」
「なんか多分、多分って私たちなんか変。」
私が笑うと風丸くんも笑った。明日も明後日も明明後日もずっと風丸くんを見に来てもいい?と聞くと風丸くんはもちろん、と言ってくれた。
「じゃあ俺からもお願いがあるんだけどいいか?」
「なあに?」
「夜の学校で今度は俺と一緒に思いきり走ってみてくれないか?」
「……うん、もちろん。」
今度は水分補給の為にもちゃんと準備しておこう。風丸くんと一緒に走るなら、きっとあの夜より速く走れるだろう、そう思えた。