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男の子とばかり一緒に遊んで、イタズラとか、人にちょっかいかけるとか、先生に突っ掛かったりとかして周りの女の子から「成神ってサイテー!」と言われていた健也くんはすっかり影を潜め、今では、サッカー部のエースとして同級生からだけではなく先輩にも後輩にもモテモテな健也くん。

私と健也くんが幼馴染みなんていう情報はいったいどこから流出して、どうやって広まっているんだろう、と悩みたくなるくらい私の元には健也くん目当ての女の子たちが寄ってくる。そのたびに『成神くんとはただの幼馴染みなだけだから』と説明してきた。女の子たちもはじめは私と健也くんの関係を怪しんでいたみたいだけれど、しばらくすると、仲が良いどころか、会話もほとんどと言っていいほどしない私たちの関係を見て、私を安全な生き物と判断してくれたらしい。

睨まれたりすることはなくなったけれど、今度は健也くんの好みはなんだとか、健也くんの幼少期のエピソードを聞かせてとか、ことあるごとに色んな人に聞かれるようになってしまった。まあそれだけ健也くんがモテてるってことなんだけれど。


「成神ー!昼休みバスケするべ!」
「おし、やるか!」


団子状態になりながら転がるように教室を出ていく男子の集団の中に健也くんがいる。いつからか、私は健也くんと一緒に走り回るのではなくて、目で追うようになってしまっていた。いつからか、健也くんのことをみんなの前で『成神くん』と呼ぶようになった。心の中ではまだ健也くんは健也くんのままなのに。そんな自分が女々し過ぎて、思わず笑ってしまう。どんどん変わっていってしまう健也くんが怖くて、素敵で、寂しくて、自分から「ただの幼馴染みだ」と言い始めたのに。そういえばその頃から健也くんは私に話しかけなくなっていった気がする。


「あ!ねぇちょっと!成神くんの幼馴染みなんだよね?聞きたいことがあるんだけどいい?」
「うん、いいよ。」


あのさ、成神くんと付き合ってるわけじゃないんだよね…?と可愛い顔を赤らめながら話を切り出す彼女に、私は、もう何も考えずとも口を滑り落ちるあの台詞を言わなきゃいけないんだろう。


「大丈夫。成神くんはただの幼馴染みだから。」


胸が痛むのはどうして?なんて白々しく自分に問いかける勇気すら私にはない。健也くんはずっとずっと私の大切な幼馴染みのまま。


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テーマ「人外ファンタジー」
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