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※一方的な片想いで百合
※円秋っぽい表現あり


私は秋ちゃんが好きだ。優しくて可愛くて、いつも私たち雷門サッカー部のことを一番に考えてくれてる秋ちゃんが好き。


「ミョウジさん、ちゃんと水分補給してね」
「う、うん……」


にこ、と微笑まれるだけで胸がきゅーと苦しくなって、体がぶわっと熱くなる。いつもこうして話しかけてくれるけど、私は毎回秋ちゃんの顔を見れない。だって可愛すぎるんだもん。だから、秋ちゃんがそんな私の態度に悩んでいたなんて全然気が付かなかった。



◇◆



練習が終わって自主練のメニューを頭の中で構成しながら水道の方へ向かうと、なにやら話し声が聞こえてきた。……告白か?そんな場面を予測しながら私は忍び足で近寄る。そこにいたのは、悲痛な面持ちをした秋ちゃんと円堂だった。秋ちゃんの姿を認めたとたんにドキンと胸が音を立てた。


「……私、やっぱりミョウジさんに嫌われてるのかも…」
「そんなことないって!ナマエも秋のことすごく頼りにしてるし、嫌われてるなんてありえないさ」
「円堂くん……」


二人のその会話を聞いて、二人のその距離の近さを見て、私は嫌でも気付かされた。二人は両想いだということに。秋ちゃんが円堂を想っているのは知っていた。前から何度か相談されていたから。でも大好きな人から恋愛相談されるのが辛くて、私はあまりそれに付き合ってこなかったのだ。そして毎日目を合わせないというあの態度。


「秋ちゃんを誤解させちゃうのは仕方ない、か」


ぽつりとつぶやいてまた二人の方を覗く。円堂が優しく秋ちゃんの頭を撫でていた。秋ちゃん、幸せそう。私が秋ちゃんに今まで通り…いや、今まで以上に冷たくすればまた円堂の近くに行けるよね。…じゃあ私、そうする。目も合わせないし、恋愛相談にも乗らない。だって大好きな秋ちゃんの為だもん。


「秋ちゃん、大好きだよ。」


私の声は秋ちゃんには届かない。届けちゃいけない。


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title僕の精

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