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人生にモテ期は三回ある。とよく言われるけれど、私はもしかして、その三回を今この瞬間、三回同時に味わっているのかなぁ、と二人の男の子の前で他人事のように考えた。なぜこんなことを考えるに至ったかというと、私が朝、いつもどうりに学校にたどり着くと、教室の前で呼び止められたことから話は始まる。


「ミョウジさん、」
「ちょっといいかな」


私にそう声をかけてきたのは、雷門一、二を争うほどのイケメン二人組だった。しかも、スポーツも勉強もなんでもそつなくこなしてしまい、性格も良い、という、まさに『神は彼に二物も三物も与えたのか!』という台詞にぴったりの人たちである。水面下で動く大々的なファンクラブとやらまであるという噂も耳に挟んだこともある。実は、声をかけられる前から二人が私のクラスの前に存在していることに気が付いていたけれど、まさかイケメンさんが私になにか用があるなんて思わなかったし、なによりあんまりまじまじと見てしまって、イケメンと目が合ってしまうのは恥ずかしいから自然を装って歩いていたのだ。


「は、はい!え?」


わ、私ですか?と、言うと二人は爽やかに笑って、そうだよ、と言った。す、すごい…イケメンはどんな場面、どんな表情でもイケメンなのか…。



△▼△▼



二人に導かれるようにして辿り着いた先は屋上で、強めの風が制服のスカートをぱたぱたと揺らした。


「えっと…それで話ってなんでしょうか?」
「ふふ、タメなんだから敬語じゃなくていいのに。まあ、そういうところもミョウジさんの可愛いトコロなんだけど。」
「かっ……!?」


聞きなれない単語に目を白黒させていると、もう一人のイケメンが、抜け駆けすんなよ!と少々声を張り上げたあと、私の手をいきなり握った。


「俺、ミョウジさんのことが好きだ。付き合ってほしい。」
「もう…抜け駆けはどっちだよ…。ミョウジさん、僕も君のことが好きなんだ。大切にする。付き合って下さい。」
「う、嘘………」


夢にだってみたことのないイケメン二人からの同時告白。これでモテ期が一気に来た、と表現した私の気持ちを分かっていただけただろうか。でも、私の答えは決まっている。


「ご、ごめんなさい…。私、一応彼氏いるんだ。」


そう、私には彼氏がいるのです。私がそう告げると、二人はぽかん、という効果音が付きそうな顔で私を見ていた。初耳、といった感じだ。「だ、誰…?」と恐る恐る聞かれて、私は二人を見つめ返す。イケメンを目の前にして、平凡とか普通とか、言ってしまえば少々地味な彼氏の名前を言うのがちょっとだけ、はばかられた。



「ナマエっ…!!お前告白されたってまっ、くす、が……あ、」



まったく私の彼氏はタイミングが良いのか悪いのか…中途半端なところで現れた。私とイケメン二人を交互に見つめる半田は、我が彼氏ながらアホ面だった。そして頭が良くて、人当たりが良く、もちろん記憶力も良いであろうイケメン二人から、「「だ、誰……?」」と言われてしまうほど、私の彼氏はいろいろと薄いのである。



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