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友達と一緒にショッピングするのはとても楽しいけれど、なんとなく気を遣ってしまって自分の買い物が出来ないので、私は久しぶりに一人で外出することにした。お気に入りのお店で前から秋になったら欲しいと思っていたタータンチェックのスカートを見つけて私が値段とにらめっこをしていると、「買わないの?」という声が後ろで響いた。


「うーん…私に似合うのかちょっと心配だから買うのに勇気がいるん……って、ま、松野くん!?」

「やっほー、一人で買い物?」


振り返れば、そこにはいつもの帽子に見慣れない私服をまとった松野くんがいた。きょろきょろと周りを見渡す松野くんに一人かと聞かれて、私はちょっと羞恥を感じながらも頷いた。松野くんも一人?と尋ねると、彼もうん、と頷いた。


「それ、試着してみたら?」
「……へ?」
「だから、そのスカート。」


松野くんが指差しているのは、私が悩んでいたスカートで、辛口チェックしてあげる、と怖いことを言った松野くんは、勝手に店員さんを呼んで、これ試着してみて良いですかー?と言いながら私の背中を押した。「ちょ、松野くん!?」「はーい、かしこまりましたぁ。試着室はこちらになりまあす、」近付いてきた店員さんが私たちにとびっきりの笑顔を振り撒きながら試着室に案内し、わたわたしている間に私は試着室に収まってしまっていた。


「……はあ、」


思わずため息が出てしまったけれど、着てみないとわからないし、と覚悟を決めて試着してみることにした。試着室の外に店員さんと松野くんがスタンバイしているのか、二人の話し声が聞こえてきた。


「可愛い彼女さんですね。」
(か、かかかか彼女!?!?)
「え?…あ〜はい。」
(なに『はい。』とか言っちゃってるの!?)


松野くんが彼女というのを肯定したせいで、私はスカートをはき終えても、恥ずかしさでカーテンを開けれずにいた。鏡をちらりと見てみれば、そこには真っ赤な顔をした私が立っていて、でもスカートは理想どうりとても可愛らしかった。(自分に似合っているかどうかは別問題であるけれど。)どうにかしてこの顔を通常仕様に戻さなければ!と必死に扇いだりしてみるけれど、なかなか熱は取れない。


「お客様、御試着はお済みですか?」
「はっはい!」
「ではカーテンをお開けいたしますね。」


店員さんの呼び掛けに思わず肯定の返事をしてしまい、カーテンがサッ、と引かれてしまった。店員さんがニコニコと、すごくお似合いですとか、このお色はすごく映えますねとか、誉め言葉を羅列させていく中、松野くんは腕を組みながら黙って私のことを見つめていた。私が色んな意味でドキドキしながら待っていると一言。


「さすが僕の彼女なだけあるね。…似合ってる。」
「あ、ありがとう……。」


ここで彼女を否定すると色々と面倒なことになると思ったので、何も言わずにお礼を言った。多分顔は赤いまんま。


△▼△▼


「買えて良かったね。」
「や、…うん。」


私がそのスカートを買ってくると、松野くんがにっこりと笑った。私がどぎまぎしながら、彼女発言について言及すると、ああ、アレね。と笑みを深くした。



「僕ミョウジさんのこと好きだからさ、さっきのが嘘にならないように頑張ることにするよ。」



ちなみにそのスカート惚れた欲目抜きで似合ってたから安心してね、とさらりと付け足した松野くんが男らしすぎて、きゅんとしてしまった。「ミョウジさん、覚悟しててね。」「う、うん…。」もう足元がぐらぐらしている気がする。


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title 僕の精

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