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数秒の空白。それが何時間にも感じられた。実際にどのくらい時が流れたのかは分からないが、ナマエの顔がみるみるうちに赤く染まっていくのは、手に取るように分かった。部活でサッカーをやっているときとは違う種類の汗がこめかみ辺りを流れていく。すると、何も言わずに返事を待つ俺からナマエが目を逸らした。やっぱり……駄目だよな。ズキンと酷く胸が痛む。


「すまない…、今のは聞かな…」
「私もじろちゃんのことすきだよ、」
「っ!………ほ、ほんとか?」


俺の言葉を遮ったナマエの返事は、私もすきだという、俺がずっと欲しくて仕方がなかった言葉だった。思わず詰め寄ると、ナマエはいつものようなふにゃりとした笑顔を見せて、本当だよ。と言ってくれた。いつもと違う真っ赤な頬が可愛くて、抱き締めたくなった。でも、がっついたら駄目だよな、と思い直す。


「じろちゃんこそ、私のこと幼馴染みとしてすきなんじゃないの?」
「ち、違う!」
「そっか。」


俺がナマエの質問を全力で否定すると、よかったあ、とまたあの幸せそうな顔で笑うもんだから、一度収めた衝動がまたひょいと顔を出して、気づいたら俺はナマエを抱き締めていた。抱き締めたら見た目以上にナマエは小さくて細くて柔らかかった。…って変態みたいだな俺。そんでもって、いい匂いがした。うわ、これも変態発言か?そんなことを考えていたら、遠慮がちにナマエの手が俺の背中に回ってきたから、本当に両想いなんだな、って実感した。


「ふふ、帰ろっか!」
「そうだな。」
「またサッカーしようよ!」
「あれはサッカーっていうのか?」
「そ、れは違うかもだけど…リベンジしたい!」
「わかったよ、」


関係は変わったけれど、明日からもナマエと過ごす時間は俺にとって大切なものだというのに変わりはない。すきだって伝える前に足踏みしてた自分が、なんだか急に阿呆らしくなってつい笑ってしまった。


「どうしたの?」
「別に?なんでもない、」




(帰ったら、まずペン太郎に報告だな。やっとか、って顔されそうだけど。)


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