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本日は晴天なり。ってな訳で、俺とミョウジは風通しが比較的良い中庭の日陰で昼飯を食った。俺が、食べ終わって空になった弁当箱のふたを閉めながら、今日も部活。とだけ告げると、いつものようにミョウジが卵焼きをほうばりながら「待っててもいい?」と聞いてきた。


「別に…いいけど、お前毎日まいにち大丈夫なのかよ。」


俺が弁当箱を鞄にしまいながらそう聞けば、ミョウジはさっき口に入れた卵焼きをゆっくり咀嚼し飲み込んだあと、きょとんとした表情をして「何が?」と言った。ちらりと無意味な視線を向ければ、まだミョウジの弁当箱の中身が半分しか減っていないことに気付いた。遅すぎる。


「何が、って…親とか、勉強、とか。」


付き合い始めてから、ミョウジは、毎日遅くまでサッカーに明け暮れている俺を欠かさず待っていてくれている。不真面目で通る俺が真面目な方に分類されるであろうミョウジと付き合ってることが、教師たちの間で既に問題視されているようなのに、ミョウジの親が何も思わないはずはない。それに俺のせいでミョウジの成績が下がるというのはなんとも…やりにくいと言えばいいのかよく分からないが、ともかくその結果は避けたい。


「修二くんから勉強という言葉が出るとは…」「うるさい」くすくすと可笑しそうに笑い出すミョウジを睨み付ける。


「あはは、ごめんね。私のお母さんも妹もお父さんもみんな修二くんのこと好きだから大丈夫だよ。」
「は?」


ミョウジの家族に会ったことは一度もない……はず。と思いながらも、頭をフル回転させているとミョウジは笑いながら、修二くんが私を家まで送ってくれてるのを二階の窓から三人で見てたんだって!と言った。に、二階の窓……帰り送ったあとの別れ際にミョウジに手は出さないようにしとかねえと駄目だな。俺が心の中で、手を出すなら二階の窓から見えない距離が必要だということを胸に刻んでいると、ミョウジは不思議そうに俺を見つめていた。


「あとね、勉強とか成績のことは全然心配ないよ。」
「……あっそ。秀才ミョウジチャンは学校のお勉強なんか余裕でクリアか」
「む……それにはちゃんと理由があるんだってばあ」


俺がからかうと、(からかうったって、こいつは本当に頭がいいから事実なのだが)言い方が気に障ったのか、両頬を膨らませ眉根を寄せた。正直に白状すると、すごく可愛い。絶対口に出して言えないけど。そんなことを俺が考えているなんて夢にも思っていないだろうミョウジが笑顔で、すごいことを言ってのけた。


「修二くんに勉強教えるときにね、なんでも答えてあげたいから頑張れるの!苦手な科学も修二くんのためなら私頑張れるんだよ!」

「……。」
「修二くん?」
「もうお前いいから黙っとけ。」
「顔赤いね。」
「…さっさと弁当食え。」
「はーい」


彼女にこんな可愛いこと言われて赤くならない男がいるなら是非とも拝見したい。俺に促されて弁当に箸を伸ばしたミョウジのペースは相変わらず遅いままだ。まだ食べ終わりそうにないし、頭いいミョウジに少しでも追い付けるように、とほんの少しだけ頑張り始めた自宅学習を続けるか悩むことにした。


幸せの一歩先を行く



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title誰そ彼


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