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時々、ほんとうに時々だけれど、人恋しくなって誰かにぎゅっとされたくなるときがある。隣に座って雑誌をめくる幸次郎は私の気持ちに気付いてくれないかなあ。送った視線に気が付いたのか、雑誌から目を外した幸次郎がどうかしたか?と首を傾げた。あ、私、幸次郎のこんな表情もすきだな。


「抱きしめて欲しい、です」
「…いいのか?」
「残念ながらエロい意味は一切含まれていません。」


私がそう言うと、それは残念だなと笑いながら雑誌をテーブルに置いた幸次郎が腕を伸ばし、私との距離をゼロセンチにしてくれた。残念って何よ、私とは身体目的で付き合ってるの?なんていう喉まで出かかった本心じゃない台詞は、幸次郎から伝わる体温で姿かたちもなく融かされてしまったようだ。


「幸次郎?」
「ん?」
「………へへ、」


本当は調子に乗って、『だーいすき』なんて言ってみようかと思ってみたけれど、恥ずかしくなって予定変更。笑って誤魔化してみた。でも、頬がこれ以上ないってくらい緩んでいたから間抜けな笑い方になってしまった。


「ナマエ…?」
「んー?」




そうしてやっぱり君に落ちる





「好きだ。」
「え…!」


まさか幸次郎から同じことをされるとは思ってなくて、驚いた私が顔を見上げると、ちょっと赤くなった幸次郎が自分で言っといてなんだが…恥ずかしいな、とはにかんでいた。あ、こんな幸次郎もすき。ていうか私たち、今すごくバカップルしてるんじゃないだろうか。でもなんか幸せで、全てどうでもよくなって、私は幸次郎の広い背中に腕を回した。



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title誰そ彼
なにこの話きもちわるい


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