先生に怒られた。確かに結果論から言えば遅刻した私が悪いよ、だけどもね!道に迷ってる感じの人が目の前にうろうろ、うろうろしててて、それでちらちらこっちを見てきてたら助けないわけにいかないでしょ…!!
先生は私が事実を伝えたって信じてくれるはずもなく…。一方的に頭ごなしに口々に説教された。あれだ、これってなんか無になりますね。この後授業出る気になれるわけもなく、私はなんとなく屋上に上がった。
「あーもー!ばーか!」
「ナマエ」
ぎょっとして振り返ると男鹿くんがいた。私はその瞬間顔に熱が集まるのを感じた。なんと言っても男鹿くんは私の好きな人なのだ。
「き、聞こえてた?」
「ああ。ばっちりな。ナマエもそれくらいの声量出るんだなー」
「あはは…」
笑うしかない。はしたない子って思われたかなあ、やだなあ…なんて思っていたら近づいてくる男鹿くん。
「お、男鹿くん!?」
「なんかあったのか?」
「!」
私が本当に感じていたのは怒りではなく悔しさと悲しさで、だからここに来て一人で泣こうと思ってたのに男鹿くんの前でなんて恥ずかしくて泣けない、
「大、丈夫だよ?」
笑ってそう言うと男鹿くんは困った顔をして頭をかいた。
「泣きそうな面して言う台詞じゃねえな、それは。」
「……………」
なんかあったのか、ともう一度優しい声音で男鹿くんが言うから私のこらえていた涙が頬を伝った。
「……………うっ…だって、わたし…遅刻と家のことは何ひとつ、かんけっないの、に……う…お前がだめなのは親が離婚歴あって風俗ではたらいて、ていやらしいからとか、言わっ」
「…………」
「それでお前もそんな女といっしょでい、…いんら、んとか言われ…」
「そうか。」
男鹿くんの声が聞こえて私は男鹿くんに抱きしめられた。
「ううっ男鹿く、制服が…」
「いーから泣いとけ」
何分そうして泣いたんだろう、とにかく私の涙は出尽くして、代わりに羞恥心が襲ってくる。私はまだ男鹿くんの腕の中だ。
男鹿くんにもう大丈夫という旨を伝えると、私たちの距離は離れて、気まずくなった。
「男鹿くん、ほんとに、ありがと」
「お、おう…。」
「泣いたらすっきり…しました。」
「…そーか」
「…………」
「……」
「男鹿くんって優しいね」
沈黙が気まずくて率直にそう言ってみる。
「はあ!?優しい!?」
「だ、だって…」
「俺が優しいのはナマエにだけだ」
はた、と時間が止まる。顔を見合わせた私たち。男鹿くんは真っ赤になって、そ、そそそんなわけだ!と飛ぶように屋上から去ってしまった。取り残された私も時間差で赤く染まる。男鹿くんの体温で心の奥まで染まったみたいに、あたたかくなっていた。
きみの匂い、魔法
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titleにやり
男鹿はヘタレと男前どちらも美味しくいただけるところが素敵。しかしかきにくい奴だ。