暇で暇で仕方がない休日。辰巳の部屋に遊びに来たけれど、辰巳がやりこんでいる格ゲーで私が勝てるわけもなく、負け続けて自然に飽きた。その上、お昼も食べて、ぽかぽか陽気が部屋に差し込んでくるもんだから私のまぶたは、だんだんと下がってくる。時計を見たら2時半を回った所だった。私、辰巳に2時間くらい挑戦し続けたんだ……。一回くらい勝たせてくれたっていーじゃん!と口を尖らす私に辰巳はしみじみと、男には譲れねぇモンってのがあるんだよ…。とか言うから辰巳の分のチョコパイを食べてあげた。
「あ!俺のチョコパイ食ってんじゃねーよ!」
「辰巳にはエンゼルパイで十分だよ。」
ざけんな!かえせ!とか言いながら、今辰巳は、RPGに夢中になっている。もーいいよ。辰巳なんかいつまでも村長の話に付き合ってそのまま年取っちゃえ。と自分でも理解不能な悪態を心の中でつきつつ、私はもそもそとベットの上によじ登る。
「寝ていーい…?」
「はあ?帰って寝ろよ。」
「今寝たいんだよー」
「つーか無理つったって寝る気だろ、既に。」
「さっすがー、わかってるねー。あ、べるくんもらうね。一緒に寝るー。」
「だぁ、」
「ったく、」
15メートル以上離れんなよ、なんて今から寝る私が、夢遊病者じゃない限りあり得ない事態を指摘してから辰巳はゲームに戻った。私は既に眠かったのと、べるくんの体温による暖かさも手伝って、布団に潜る前に完全にまぶたを閉じてしまった。
「…ん、んぁ…ふぁああ。よく寝たなー………」
「それはこっちの台詞だコラ。」
「ダ!」
「あ、べるくんも起きてたか。」
私が寝てる間にゲームは飽きたのか、漫画を読んでいた辰巳の背中にはべるくんが張り付いていた。仲良いね、ほんとに。まだしょぼしょぼしている目を擦りながら、時計を見ると4時を過ぎていた。結構寝たな…なんて思いながら体を起こす。
「あれ…?ブランケット…?」
かかっているはずのない布に、私は首を傾げた。そうして少しだけ考えて気づいた。目の前で背中を向けたまま漫画を読む辰巳がかけてくれたのだということに。
「…布団の上で寝てごめんね。」
「あ?別に気にしねーよそんなん。」
「たーつみ?」
呼び掛けて、振り返ったところでキスしてみた。振り返ってすぐしたから、私の唇が、辰巳の口のはしっこに落ちたけれど、私はとっても幸せだった。大好きだよ、と笑顔で付け加えたら、すぐにまた背中を向けてしまった辰巳から、たりめーだ馬鹿。と返ってきて笑えた。
今、辰巳の持つ漫画が逆さまなことは黙っておいてあげよう。
そうやってまた(好きが増えていくんだよね)
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title僕の精
男鹿の彼女になって、「たーつみ」って呼びたい。