私は石矢魔で東条一派の一人、陣野さんとお付き合いをしています。今は、陣野さんの部屋で一緒に勉強中。初めてこの部屋に入れてもらったときは緊張でガチガチになってしまって陣野さんに笑われたっけ、とふと思い出す。
「ねぇ、陣野さん、」
「なんだ。」
勉強頑張ってるところ悪いなあと思いながら話しかける。陣野さんは解いている分厚い問題集から一度も、一瞬も目を話さずに返事をしてきた。さすがの私もそれにはむっとする。
「もういいです。」
いじけて言った言葉に、陣野さんは顔を上げて一言。
「それは俺の台詞だ。」
…はい?私の頭の中をクエスチョンマークが埋め尽くす。陣野さんが、私に…もういいって言ったの…?それって、そこまで考えて頭が真っ白になっていくのが分かった。
「え、それはその…つまり…」
「そういうことだ。」
「っ…!!」
「別れる」そんなこと考えたことは一瞬もなかった。だから急に叩きつけられた事実に対応できなくて、なんのアクションも起こせないでいた。固まっている私を余所に、陣野さんは一旦参考書に戻ってから、ちらりと私のことを見た。
「……はあ、分かってないみたいだな。」
ため息をつかれたのと同時に頭を大きな手で撫でられる。訳の分からない私は、頬にこらえきれなかった涙が伝うのを感じながら陣野さんを見上げた。
「!な、泣いてるのか?」
「わ、別れたくないですっ、私、陣野さんのこと好きだから!」
「いや、俺も別れる気はないぞ」
「……え?」
困ったように笑った陣野さんは私の涙をぬぐってくれた。
「じゃ、じゃあもういいっていうのは……」
「ナマエが俺のこと名前で呼ばないから拗ねてただけだ。」
「へ、…え!?そ、そうだったんですか!?」
びっくりして涙が引っ込んだ。な、なんだ…別れようって意味じゃなかったのか…。ほっとして胸を撫で下ろす。そして痛いくらい注がれる陣野さんの視線。目が訴えている…!私は覚悟を決めて、口を開く。
「…か、かおるさん…」
「うん。」
もう勉強は終わりにしようかと言って参考書を閉じた陣野さんと、目が合って、ああきっとこの後は陣野さんのことしか考えられなくなっちゃうんだろうな、と思いながら私もシャーペンを置いた。
くっつく季節
(…優しくしてください、ね)
(名前で呼んだら考えといてやる。)
(ど、努力します…。)
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よくわからなくなった…。拗ねちゃっても冷静な陣野さん素敵←