スロウ | ナノ




練習の合間の休憩中みんなの動きを観察して作戦を考えているらしい鬼道さんを見ながら私が思わず呟いた、

「鬼道さん、ゴーグルを外したらもっとモテるんじゃないかなあ」

という言葉にみんなが一斉に振り返った。な、なんだろう?後ずさりながら、意味のない笑いを浮かべる私をよそに、今度はみんなが輪になって小さな声で話し始める。不思議そうな顔をした源田くんが私の後ろからやってきて首を傾げた、と思いきや辺見くんに襟を掴まれて輪の中に引き込まれてしまった。



「佐久間先輩!なまえ先輩ってゴーグル外した鬼道さんが好きなんスか!?」
「違うな。」
「……きっぱり否定するな。俺だって傷付く。」
「あ、サーセン。」
「俺こないだから思ってたんだけど…」
「なんだよ咲山。」
「みょうじってギャップに弱いんじゃないか?」
「「「ギャップ……?」」」
「ギャップってペットボトルのあれか?」
「それはキャップだろーが!源田は黙ってろ!」
「「「ナイスツッコミ不動☆」」」



私が、みんなの輪の中に入るでもなく、ぼうっとしている間に話し合いは終わったようで、いつの間にか練習を再開しようとしていた。


「なんだったんですか?」


ゴールに戻ろうとする源田くんからボトルを受け取りながら尋ねると、いつものように笑いながら、みんなキャップを目指すんだそうだ!と言って行ってしまった。


「きゃ、キャップ…?」


そんな名前の有名なサッカー選手いたっけ?と思いながら、私も自分の仕事にもどるのだった。




 
×
- ナノ -