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最初に部室にやってきたのは、咲山くんと辺見くんと私の三人組で、それなりに人数が集まるまで少し会話をする流れになった。そこでぽつりと咲山くんがつぶやく。


「あーまじ調子出ねぇ……辺見のせいで…」
「俺のせい!?」
「デコで光が反射すんだよ。ほんとお前ハゲろ。残りの毛根も死滅しろ。」
「残りの毛根って…俺別に禿げてるわけじゃねーから!」


この二人はいつもこんな感じで言い合いをしていて、見ていて飽きない。普段はここに成神くんも不動くんも混ざってくるから少し辺見くんが可哀想だけど。くすくす笑っていると、咲山くんが急に私の方を向いた。


「なあ…みょうじもそう思うだろ?」
「なっ……みょうじは関係ないだろ!?」
「え…っと……あの、あ!熱出したときは冷えピタくん貼りやすくていいね!」


私がそう言うと二人はぴしっと固まった。そして急にお腹を抱えて笑い出す。(主に咲山くんが。)


「冷えピタ…っ……ぶふっ…!よ、よかったなピタ見!」
「う、うっせ!笑うな咲山!」


やっぱり私、まずいこと言っちゃったんだ。辺見くんが怒りで真っ赤になっているのを見て、私は慌てて付け加える。


「あ、の!でも辺見くん眼鏡似合うよね!」
「あー…辺見って授業中だけ眼鏡かけてんだっけ?」
「ああ、違うクラスなのになんでみょうじは知ってるんだ?」


話が冷えピタくんから離れたことにほっとしながら、私は眼鏡姿の辺見くんを他の教室に移動した時に見かけたことを説明した。


「すごく似合うよね!かっこよかったな〜眼鏡かけた辺見くん。」


私がそう言うと二人はぴしっと固まった。辺見くん、顔が赤い。あれ、さっきも同じ光景を見たような…。直後に部室に現れた鬼道さんに咲山くんが何かささやいて、辺見くんの今日の練習メニューが三倍になったのは何故だろう。



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辺見に眼鏡は絶対似合う。



 
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