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「お?早いな〜二人とも!」


元旦からものすごい声量かつさわやかな声が聞こえて、わたしと成神くんは振り返った。いや、正しく状況を説明するならば、わたしと成神くんと待ち合わせか何かでその場に居た見知らぬ全員がその声のする方に振り返ったのである。そこには、声の大きさに劣らないほど大きく手を振る源田くんとその隣を恥ずかしそうに歩く寺門くんの姿があった。そりゃあ、新年早々あれだけ大きな声を出す人が隣にいたら恥ずかしくもなるだろう。


「げ、源田先輩と寺門先輩…ずいぶん早いですね…」
「何を言ってるんだ成神、おまえたちの方が早かったじゃないか!」


もっともなことを述べる源田くんに、何故こんなに早くここにいるのかを知っているわたしたち二人はあははは…と乾いた笑みを浮かべることしかできなかった。「あ!それよりまずあけましておめでとう!だな。今年もよろしくな。」でもまあ、にっこりと微笑む源田くんに勝てるわけもなく、成神くんはもう吹っ切れたかのように源田くんの側に近寄り、話し始めた。


「寺門くんもあけましておめでとう。今年もどうぞよろしくお願いします。」
「ああ、あけましておめでとう。よろしく。」


それにしても早かったねぇ、とつぶやくように言えば、俺は方向音痴だからなと少々的外れな発言が返ってきた。わたしが思わず、え?と聞き返すと、寺門くんは恥ずかしそうに、方向音痴だから、待ち合わせの1時間前には着くような計算で家を出るのだ、ということを教えてくれた。さらには、大抵待ち合わせの1時間前にはちゃんと着くということを聞いて、わたしは頭の中で寺門くんの特徴に『心配性』を追加することにした。


 
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