み…水着…?頭の中で成神くんの発した単語を反復する。反復して分かったのは、何故、夏休みに部活が休みの日がないから私に水着を着てください!ということになるのか分からない、ということだ。
「だって〜先輩の水着とか見なきゃ、夏休みずっと練習する気力なんて出ませんもん!」
ぷくう、と頬を膨らませて眉を寄せる成神くんの可愛さに思わず頬がゆるんだけれど、慌ててそれを引き締め直す。だめだめ、この可愛さに何度騙されてきたことか!そう自分に言い聞かせていると、鬼道さんの低い声が響いた。
「やる気が……出ない…だと…?」
「げっ…」
とても「ははは、成神、冗談なんか言ってないで練習するぞ」なんて朗らかに笑い飛ばすような雰囲気ではない鬼道さんのオーラに成神くんはじりっと後ずさった。洞面くんがぼそっと「御愁傷様。」なんて言うから私まで怖くなってきて思わず鬼道さんを見つめてしまう。
「みょうじの水着ってビキニなのか?」
鬼道さんの怒りがどのように爆発するんだろうとみんなが息をひそめて待っているときに響いたのはわりかし真剣な源田くんの声。振り向けばほんとに真剣な顔をして、腕をくんだ源田くんが私を見つめながら「ビキニは露出が多いからな…心配だ」と告げた。
「………いやいやいや、KYとかのレベルじゃねーぞ?」
咲山くんの言葉に私は思わずうんうんと頷く。成神くんはさっきの空気が壊れたことで、助かった!とばかりに源田くんに話しかける。「でもやっぱり着てもらうならビキニがいいっす!」しかも首の後ろで結ぶタイプ!と主張する成神くん。
「やっぱり今どきの若い奴はビキニが好きなのか…」
源田くんの発言にツッコミを入れる人は誰もいなくて、成神くんと源田くん、それと怒りによるものなのか、固まったままの鬼道さんを除く他のメンバーは練習を開始しようとそさくさとその場を離れ始めた。私も仕事しようと三人に背中を向けると服の裾をつんつんと引っ張られる。下を見ればそれは洞面くんだった。
「実際、なまえ先輩の水着ってビキニ?」
「え?……うん、まあね。」
洞面くんの質問にそう答えると、ぶっ!という音とどさっという音がして、難しい顔をする源田くんと無邪気に「わーいビキニ!」と喜ぶ成神くんと私の隣に立つ洞面くん以外のメンバーが倒れていた。
「え、ええっ!?みんな!?」
「……どいつもこいつも……僕ムッツリな先輩ばっかなサッカー部辞めよっかな。」
「どどど、洞面くん!そんなこと言ってる場合!?みんな大丈夫!?しっかりしてー!」
---------------
オチがいまいちなのはご愛敬。