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「夏だー!」

「サッカーだー!」

「一日中サッカーだー!」


いきなりグラウンドの真ん中へ向かって叫びだしたのは、成神くんと源田くんと辺見くんの三人組。鬼道さんに総帥からの今日の伝言を聞いている最中だったわたしは、鬼道さんと顔を見合わせた。「ど、どうしたんですかね三人とも...」「熱中症の一種か、それとも単に頭がおかしいのかどちらかだな。」鬼道さんの容赦のない言葉に、近くにいた咲山くんは、後者に決まってんだろ...と吐き捨てるように言った。その咲山くんの隣にいた洞面くんも、咲山くんの意見に同調するように頷いている。なんだか今日はみんな辛口なんだなぁなんて考えながらもう一度三人組に目を向けると、辺見くんの目にキラリと光ったものが見えた。


「なあみょうじ!夏休みがサッカーで全てつぶれるってどういうことだ!?」


まさか、とは思っていたけれど、辺見くんの目元に光る正体は涙だった。涙を確認したのとほぼ同時に、肩をがしっと掴まれて、前後に軽くゆすられる。(からかわれているとき以外は)いつも冷静な辺見くんにいったい何が...?わたしが辺見くんにされるがままになっていると、横から腕が伸びてきて、辺見くんの腕を叩き落とした。


「何やってんだ馬鹿」
「佐久間くん...ありがとう」
「みょうじもやられっぱなしのままでいるなよな」
「...ごめんなさい」


辺見君の腕を叩いたのは佐久間くんで、お礼を言えば、お前も悪い、と叱られてしまった。つい謝ってしまったけど私別に悪いことしてないよね?そう考えていると、腕を組んだ鬼道さんが、「俺たち帝国サッカー部に夏休みはないと思え!」と言い放った。おぉ流石は鬼道さん。でも、改めて考えると、夏休みに休みがないのって辛いなと私も思ってしまう。鬼道さんの隣にいる以上そんなこと言えないけれど。


「私もみんなが頑張れるように、頑張るから、頑張ろうよ!」
「頑張るばっかだな。」
「う、」


咲山君の鋭いツッコミみにひるみそうになりつつも、ね?と私のほうを見ていた成神くんにガッツポーズを作ってみる。


「じゃあ...なまえ先輩!水着着てください!」「えっ!?」

「「「「はっ!?」」」」


成神くんの発言に私たちは揃って声をあげた。みず…水着…?




 
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