「なまえ先輩、なまえ先輩!今のシュート見ててくれましたー?」
「なまえ先輩!俺のことも見ててくださいね!」
「うん!二人ともがんばれー!」
グラウンドでぴょんぴょん跳び跳ねる洞面くんとこちらに向かって思いきり手を降る成神くんに私も大声で答える。二人が可愛すぎるから私の頬が緩んでしまうことは仕方がないことだと思う。そんな言い訳を考えながらにやにやしていると、いつの間にか隣に来ていた鬼道さんが「だらしない顔だな」と呆れ顔でつぶやいた。
「す、すみません…!でも、二人とも可愛すぎるんですよ!」
そう思いませんか?と鬼道さんに問いかけると、男の俺があいつらを可愛いすぎると思ったら気持ちが悪いだろう。と真顔で言われた。なるほど…確かにさっき私の隣で私と同じように鬼道さんもニヤニヤしながら二人を見ていたとしたら、それは問題な気がする。
「それにしてもやっぱり可愛いなあ、」
一つしか違わないけれど、男の子達にあんな風になついてもらえたら、可愛く感じない年上のお姉さんはいないと思う。グラウンドに戻っていく鬼道さんを見送ったあと、私の頭の中は再び振り出しへ戻る。わあ!成神くんが鬼道さんと一対一だ!がんばれがんばれ、と考えていると、流石は鬼道さん。上手く交わして突破した。
「鬼道さんすごい!成神くん、おしい…!洞面くん頑張れ!!」
「はは、みょうじは本当に後輩二人が好きだよな。」
後ろから声がして、振り返ると、考えていた距離よりもずいぶん近くに源田くんが立っていた。小さめにしといたはずの声援を聞かれていたことに気付いて私の体が恥ずかしさで熱くなる。今私の前に立つゴールキーパーの源田くんはみんなとは練習メニューが異なる。この汗の量を見ると、総帥の指示した練習はかなりキツいものなんだろう。
「あ、源田くん。はい、タオル。」
「ありがとう。」
源田くんにも鬼道さんと同じ質問をすれば、きっと大筋は変わらない答えが帰ってくるんだろうなと考えていると、ドリンクを何回か口に含んだ源田くんが苦笑いを浮かべながら、俺もあいつらが可愛いすぎてな…つい甘やかせてしまう。と言った。
「ほんと!?源田くんも分かってくれる!?」
「ああ、」
「なんか頭撫でたくなっちゃうっていうか、こう、なんでも許しちゃうっていうか…」
「ああ、ある意味目に入れても痛くないっていうのはこういうことを言うんだろうな。」
「なるほど…!源田くんにわかってもらえて私嬉しい!」
「俺もみょうじと同じ気持ちで嬉しいよ。」
にっこりと笑った源田くんは、こんなに汗をかいてるのに爽やかだ。なんだか私たちが二人のお父さんとお母さんみたいだね、と笑うと、源田くんは驚いたのか目を大きく開いてから、少し色づいた頬をゆるませた。
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「……みょうじはともかくとして源田はなんなんだよ…。」
「意気投合して最終的に良い感じになってるのがムカつく…。」
「げ、源田センパイって俺たちのことそんな風に見てたんだ…ちょっと距離おこうかな……。」
「ぼ、僕も…。」
「鬼道さん?さっきから項垂れてどうしたんですか?」
「…なぜ俺はさっき、みょうじに同意しなかったんだろうか…!!」
「「「「…………。」」」」
「あの二人ほんとオカンみたいだな。」
「というよりもうあれ、孫の話をするババァだろ。」
「世代越えたな。」
「源田は性別すら越えてるけどな。」