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※臨也が別人です
※シズイザみたいなイザシズみたいな
※駄目な方は逃げて下さい
※本当にひどいです




★静雄→←←←臨也でウザい位静雄ラブでズタボロな扱いを受けまくる臨也





今日も世界はこんなにうつくしい。

昼間の快晴をそのまま無理矢理引っ張ってきたような星空は、東京ではそうそう見れたもんじゃない。それでも空気の澄んだ田舎なんかには到底かなわないだろうが、それにしたって綺麗だ。ちかちか眩しいネオンと相まって俺の視界は何もかも輝いて見える。ああ、このまま俺の視界のなかに映り込む俺の世界すべて、何もかもがいっそ自分のものになるならばどんなにしあわせだろうか!


「やぁシズちゃん!今日もいい天気だねぇ」

「こんな時間から寝言かましてんじゃねーぞ。何くわぬツラして池袋に来んなノミ蟲が」


息を吐く暇すらないようなほどいっそ見事過ぎる早口で、罵倒される感覚はいつも通りで実に清々しい。甘いなぁシズちゃん、夜だろうと昼だろうと寝る人間は何時だって寝るんだよ。例えば夜勤に明け暮れる業種の人間なんか良い例だ。まぁ情報屋を営む俺は24時間いつだって仕事に励み、逆を言えばいつだって眠ろうと思えば眠れるけれど。


「怖い顔もまたいいけどまぁそう怒らないでよ。そんなことより仕事終わった?要するに今帰り道?つまり暇?暇だよねぇ?じゃあここからは晴れて俺たち二人の時間というわけだ!」

「………やっぱり寝ぼけてんじゃねーかよ。何言ってんだおまえ。とっとと布団戻れ」

「起きてる起きてる。俺は通常仕様です。だから何の心配も要らないよ?よって俺とデートしよう」

「なにがだから、なんだよ。そこのコンクリートに頭ぶつけて今すぐ脳内補正してやろうか?」

「わぁ!優しさ?それもしかして俺のこと考えてくれた優しさ?ねぇ俺のため?俺のためなのかな?」


人気の少ない路地裏でぐいぐいとそのまま距離を詰めると、シズちゃんはどうしてかうわぁと言わんばかりの絶妙な表情でそのまま一歩後退する。


「…もういいからとっとと新宿帰れ。今日は周りに標識ねぇから特別に見逃してやる」

「やだなぁシズちゃんってば、こうして道端で会えたのも何かの偶然じゃない。素敵な夜にここはひとつ乾杯と行こうよ」

「前言撤回するから手前はとっとと病院行け」


シズちゃんの相変わらずの辛辣な物言いに、俺もこれまたいつもと同じようにへらりと笑って見せた。この瞬間ばかりは彼はいつもほんの少し困ったような表情を見せる。そりゃまあ基本は死ねだの殺すだのってツンツンさをめいっぱい含んだ言葉ばかりが投げ付けられるけれど、俺は彼のこころが色んな意味で、そんじょそこらの人間よりも穏やかに造られていることを熟知している。

まぁそれは大抵俺に関することを除けばの話だったけれど、それでも揺らいでいる以上その部分は俺にとって、例えどれだけ微々たるものだろうが隙に成り得る。付け込まない手はないだろうと必死になってからもうどのくらいが経ったろうか。しかしなにもかも全てが俺の気のせいだと言われてしまうと、流石にそればかりは多少遣る瀬無いのだけれど。

愛は深い。星が燦然とかがやく夜空の下、邪魔にしかならないビルと建物の隙間をかい潜りこうしてきみに出会えたのは、今の俺の愉快な思考回路ではとんだラッキーにしかならない。いわば同じ時代に生まれ同じ国に生まれ同じ首都に生まれ同じ高校に通い巡り会えた、そう運命だ。これが運命じゃないなら何だ?どう転んでも奇跡にしかならないこの事実を想うと、俺はいつも息が詰まる。


「シズちゃんが付き合ってくれるなら俺は病院でもどこでも一向に構わないよ」

「帰れって言ってんだろ」

「どうして?」

「手前が嫌いだからだ」


嫌い、という言葉に反応した俺のからだはほんの一瞬、判別がつくかどうかも怪しいくらいの硬直を見せた。表情の制御がうまくいかずに咄嗟の笑みを絶やしてしまう。それでも、そんなのは当の本人である俺とてわかるかどうか怪しいものだ。それなのにどうしてかシズちゃんはいつも、自分の言葉にまるで自分が傷ついたみたいな顔を見せる。

シズちゃんはその見た目に反して酷く人間らしいこころを持っていた。こころだなんてそんなものが人間に存在しているのかは、どこの偉い誰かさんが提唱していようがいまいが俺には信用する価値すらないものだったけれど、ひとまずシズちゃんのこころっぽい何かがあったとしよう。それならばシズちゃんのこころっぽいものは、彼が誰かを傷つけるたび同等に傷ついている気がしてならない。つまるところそれが優しさだと、俺にはそう思えてならないわけだ。


「ずーっとこうやって追っかけてるのもしあわせなことだとは思うよ?一応ね」

「…ああ?」


星はかがやく。毎日毎日きみとおれが立っている世界がこんなにもうつくしいのは、変わりなく輝く星が常に頭の上にあるのとおんなじことだ。
太陽の光が届く昼間にその姿が見えなくても、星はいつだって俺とシズちゃんの頭の上できらきらきらきら光り続けている。休みなく、絶え間なく、ちっぽけな人間が指をさして星座をなぞることのできる奇跡と、大差のない奇跡を感じて何が悪い。


「つまりあれだよ、仲を深めるためにまず時間が必要ならもっと俺たちは一緒に居る必要があると思わない?」

「一ミリも思わねぇ」

「じゃあ一ミクロンならシズちゃんのこころっぽいものは俺のものになるのかな?」

「…なんなんだよこころっぽいものって。意味わかんねぇしうぜーしもう何でもいいからとっとと帰れよ。本当うぜぇ。殴るぞ」


お仕事でよほど疲れたのか、言葉に反してその拳はいつまで経っても俺のからだ目がけて飛んでは来ない。それはそれで物足りない気もしたが、そのまま口にしたら余計な反感を買い、ついでに誤解も招きそうだったのでとりあえず口を噤んで笑っておいた。

俺が笑うとシズちゃんが怒る。俺が怒ってもシズちゃんは笑わないけれど、まぁそこをどうにかして振り向かせるのは自分の腕の見せ所だろう。まぁ手段なんてないけど、可能性も皆無だけど、それだって全く相手にされないことに比べれば、俺にとっては随分と偉大なことだ!


「…俺は帰る。手前も帰れ。あと二度と池袋くんな出来れば帰りに何かに轢かれてそのまま死ね」

「帰るの?なら俺も言われた通りに帰るね。ただしシズちゃんの家に」

「来るな!帰れ!死ね!」

「じゃあふたりでどっか行こう?」


いい加減疲れた。聞こえない声を一緒に吐き出す様にシズちゃんは俺の顔を見て、その眉間をぴくりと引き攣らせてからはーっとそれはもう長い溜息を吐き出してみせた。

いやここはやっぱりシズちゃんの家に帰って俺が肩揉んであげるっていうのも悪くないね?そんな俺の提案に、シズちゃんは大事なプリンだか牛乳だかが入っているコンビニの袋を、頭上から勢いよく振り下ろしてきた。がしゃりと鈍い音を立ててそれは頭のてっぺんに命中し、じんわりと鈍い痛みが走る。

痛いよシズちゃん、愛って痛いものなのかないやでもやっぱこれはなかなか結構痛い。
生理的に滲んでしまった涙ぐんだ瞳で呟けば、また更にドン引きの表情を見せたシズちゃんだったが、そのあとの「死ね」の一言はどうにも生易しい響きに聞こえてならない。俺の気のせいだろうか。もしかしてシズちゃんのこころっぽいものが垣間見せた奇跡かも知れない。



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