ウォーターレジャー!


蜀取った後。

。。。。。。。

心地いい冷たさに目を閉じる。水に使った両足をちゃぷちゃぷと動かせば、踊るように水がはねた。
冴え冴えとした朝の日を浴びて、川は穏やかに光っているのだろう。
確かめるように目を開けて、思わず仰け反った。
「りょ、ふ?!」
その驚くほどの長身を膝辺りまで水に着け、川岸に座っている私の前にそびえ立つのは紛うこと無く呂布だ。あげた素っ頓狂な声をごまかすように咳払いする。
「……何だ」
「…いや、何だじゃなくて…。なにしてるんです?」
よっこらしょ、と足を川から抜いて立ち上がると、近くなった呂布の顔が顰められた。
「貴様こそ何をしている」
「…海水浴……じゃあないですね。海じゃない。うーん、散歩、ですかねー?」
「こんな早くに護衛も付けずか?」
「そうです。……ってなんで呂布さんがそんな心配してるんですか」
「……貴様に死なれたら困るだろうが。大して強くもないやつがちょこまかと動き回るな」
「わあ辛辣☆」
主に向かって貴様とは何事ですか貴様。
その鼻っ面をへし折ってやろうと、未だ川の中で佇む呂布の腹をおもいっきり押すために亮腕を突き出した。
一瞬目を見開いた呂布が、とっさに私の腕を握って上手く受け止める。それでもめげずに体ごと体当たりすれば、滑ったのかとうとう呂布は水に落ちた。
「ざまっ…」
…………その勢いのまま私も水に落ちたことは言うまでも無いですが。

派手な水飛沫を背に浴び、一瞬の沈黙が降りた。

「…りょふさーん、生きてますかー?」
「……当たり前だろうが」
怒鳴る気力もなくなったのか、そのまま川にどっかりと座った呂布が私を睨む。
身長の問題で同じように座れない私はさっさと陸に上がってそのまま倒れこんだ。
先程よりも少し高く上がった朝日が目に痛い。
「………朝っぱらから何やってるんでしょうホントに」
「…貴様が余計なことをしなければこんな事にはならなかっただろうが」
「む、本当ならえーっと、…不敬罪ってこの時代でも適用されるんでしたっけ?」
「知るか」
「そりゃそうですねー。…呂布寒いです」
「貴様のせいだろうが。自分で何とかしろ」
「……このゴキブリ」
無言の呂布がやけにゆっくりと起き上がる。
「いやいや冗談ですやめて命だけは、命だけはお助けくだされ」
心底呆れ返ったような呂布が、しばらくして言った。
「……その程度で殺すか阿呆め」
「阿呆とは何事ですか酷いですちょっと于なんとかさんの真似をしただけだっていうのに」
「……于禁か?」
「想像にお任せします」
無双の于禁さんは絶対そんなこと言わないだろう。在りし日の横山于禁を思い浮かべて忍び笑う。
「…何を笑っている?気色の悪い」
忍べてなかった。思わず口を尖らせる。
「ちょっと、一応私蜀の主ですよ?この国で一番偉いんですよ?気色悪いとは何ですかー!」
「ならばそれなりの行動をとれ。護衛も付けず朝から川に足を突っ込む馬鹿だろうが貴様は」
「……むむむ」
「何がむむむだ」
「…おお!」
憧れのやりとりが今此処に!
いや呂布さん貴方結構むむむ連呼してましたよねとは言わない。
そして念のため呂布は李恢さんではない。
「…何がそんなに嬉しい?」
「いやぁうん。気にしないでください」
「……意味がわからん」
「むしろ分かったら怖いですけどねー?」
「なら妙な顔をするな」
はいはい、といい加減起き上がる。
未だ座ったままの呂布に手を差し伸べた。
「…ふん」
珍しく素直に手を取った呂布は、しかし私が支えるには重すぎる。
それをわかっているのか、ほとんど自力で立ち上がった呂布が小さくくしゃみをした。
「呂布が!くしゃみ!呂布が!」
「…五月蝿い」
「まぁ人ですもんねー」
ぎゅっと服を適当に絞る。しかしそれはあまり意味をなさなかった。絶えず滴り落ちる水を見つめる。
「…帰るぞ」
「へーい」
川に背を向けて、くしゃみを噛み殺す。
走ってきた陳宮になりふり構わず怒鳴りつけられるまで、のんびりと城に向かって歩いていた。







。。。。。。。。。。
呂布かわいいよ呂布。
口調が迷子な気がしないでも無い。
あと横山ネタすみませんでした。
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -